ガリガリ君ソーダが、なんと20年ぶりのリニューアル。その裏に隠されたマーケティング戦略とは?
今回は、お客さん目線になりマーケティングを成功させる3つのポイントをガリガリ君の事例から解説します。
あなたのビジネスにも活かせる内容をお届けできればうれしいです。ぜひお見逃しなく!
定番のガリガリ君ソーダをリニューアル
国民的アイスとも言える、赤城乳業のガリガリ君の定番商品 「ガリガリ君ソーダ」 が、約20年ぶりにリニューアルされました。
リニューアルの背景
リニューアルのきっかけは消費者調査からでした。「素材や製法へのこだわり」 が消費者に伝わっていないことが判明したためです。
「きっかけは、お客様の声にショックを受けたからなんです」
岡本氏 (引用者注: 赤城乳業のマーケティング部課長の岡本秀幸氏) はリニューアルに踏み切った理由をこう語る。岡本氏がショックを受けたのは、22年6月に実施したガリガリ君の消費者調査で出てきた声だ。
赤城乳業は、不定期に消費者の生の声を徹底的に聞くインタビュー調査を実施している。今回のガリガリ君を対象にした調査では、以前と同様に 「夏、仕事終わり、お風呂上がりのクールダウンやリフレッシュに最適」 「寝る前に食べても、甘ったるくならずに寝られる」 「キャラクターが目立ち、商品が分かりやすい」 「いろんな味があって楽しめる」 といったポジティブな意見が並んだ。だが、岡本氏は選ぶ理由としてあるキーワードが出てこないことに違和感を覚えた。それが 「素材や製法へのこだわり」 だ。
「商品への理解というか、深い回答がなかったんですよね」 。岡本氏は当時を振り返る。そこで調査の途中にもかかわらず、質問項目を変更。「ガリガリ君は味の付いた氷を削って固めていると思いますか?」 と聞いてみたところ、半数以上が 「YES」 と答えた。岡本氏にとって、これはとても想定外な結果だったという。
(中略)
ガリガリ君のおいしさの秘訣である氷。「こだわりが伝わっていると思い込んでいました」 と岡本氏は衝撃を語る。「コーンポタージュ味などユニークな味のラインアップは、お客様に強い印象を残せたし、当社のチャレンジ姿勢を伝えることができました。でも、楽しんでもらいたいあまり、"面白い" に振り切り過ぎてしまって、当社の大事なことが伝わっていなかったかもしれません」 。岡本氏はこう振り返る。そこで、思い切ってど定番味のリニューアルを決意したのだ。
こだわりと提供価値
リニューアル後のソーダ味は、今まで以上に氷の存在感があるガリガリ君のアイスになりました。
リニューアル後のソーダ味は、大きい氷の粒の割合が増え、氷の存在感がより強く感じられる仕様に。食べてみるとその違いは歴然。今までよりもがりがり、ごりごりとした氷の粒感を堪能できる。さらに、パッケージにも氷へのこだわりを訴求するキーワードを載せ、デザインも氷を強く打ち出したものにした。
リニューアル前のハッケージ (出典: 日経クロストレンド)
リニューアル後のパッケージでは 「氷の粒」 を強調 (出典: 日経クロストレンド)
ガリガリ君ソーダは商品リニューアルによって大きい氷の粒の割合が増え、氷の存在感がより感じられるアイスになりました。自分たちのこだわりを入れ、それが氷の粒感を堪能できるという価値をガリガリ君のアイスを食べる消費者にもたらしたのです。
前半のまとめ
一度ここまでの内容をまとめておきますね。
- ガリガリ君ソーダが約20年ぶりにリニューアルを実施。リニューアルを決断した背景は、消費者調査から 「素材や製法へのこだわり」 が伝わっていないことが判明したため
- リニューアル後のパッケージでは 「氷の粒」 を強調し、氷へのこだわりを訴求するデザインに
- 新しいガリガリ君ソーダは大きい氷の粒の割合が増え、氷の存在感がより強く感じられる氷の粒感を堪能できるアイスになった
学べること
ではガリガリ君のリニューアル事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
お客さんの理解
1つ目のポイントは 「お客さんの理解」 です。お客さん目線になるとはどういうことかに学びがあります。
ここで大事になるのは、売り手と買い手の認識のギャップを知ることです。
ガリガリ君を例にすると、消費者はガリガリ君への 「素材や製法へのこだわり」 に対する認識は持っていなく、消費者にとっての印象として強かったのは味やキャラクターです。一方、赤城乳業は氷の製法にこだわりや自信を持っていました。売り手と買い手の認識にギャップがあったわけです。
お客さん目線になることの本来は、お客さんが見ている光景と同じものを自分たちもお客さんの側に立って見ようとする行為や姿勢です。お客さんが自社商品やカテゴリーをどう見ているか、どう捉えているかを理解することが大切なのです。
原点を知り立ち返る
ガリガリ君の事例からの学びの2つ目は、自分たちの原点や創業者の思いを理解し、時々でもいいので原点に立ち返る重要性です。企業の歴史や創業者の想いを再確認することでブレない軸が中心に通り、一貫性のある判断や実行ができます。
赤城乳業の例では、「氷」 が同社の原点であり、氷の製法に絶対の自信を持っていました。自分たちのこだわりを理解し、商品やサービスの中心に据えることが大事です。
こだわりをお客さんの価値に転換する
自社のこだわりを単に打ち出すだけではなく、お客さんにとっての価値に転換することが大切です。
お客さんによっては、売り手のこだわりを押し付けられるのはありがた迷惑になってしまいかねません。こだわりをお客さんの文脈に合わせて意味づけをすることが必要です。
ガリガリ君の場合は、氷の粒を作る精度へのこだわりが赤城乳業にはあり、どこにも負けない自信がありました。リニューアルでは大きい氷の粒の割合を増やし、今までよりも氷の粒感を堪能できるガリガリ君にリニューアルをしました。これにより、ガリガリ君ソーダ味にしかないおいしさという価値をお客さんにもたらしたのです。
まとめ
今回は赤城乳業の 「ガリガリ君ソーダ」 のリニューアル事例を取り上げ、学べることを掘り下げました。
お客さん目線でマーケティングを成功させるためには、以下の3つのポイントを意識して取り組むといいでしょう。
- お客さんの理解: お客さんが自社商品やカテゴリーをどう見ているか、どう捉えているかをお客さんの側に立ってお客さんと同じ光景を見るようにして理解する
- 原点を知る: 企業の歴史や創業者の想いを理解することで、ブレない軸が中心に通り一貫性のある判断や実行ができる
- こだわりをお客さんの価値に転換する: 自社のこだわりをお客さんの文脈に合わせて意味づけし、お客さんにとっての価値に転換することが大切
お客さん視点になったマーケティングは、ビジネスを成功し続けるために欠かせない要素です。今回のポイントを活用して、お客さんに選ばれ喜ばれるマーケティングの参考にしてみてください!
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!