もしもの時に備える防災グッズが、今やインテリアとしても楽しめるアイテムに進化しています。
従来の防災用品とは一線を画し、機能性だけではなくデザイン性も兼ね備えた新たなトレンドが生まれつつあります。その背後にある私たちが学ぶべきポイントは何でしょうか?
今回はインテリアとしての防災グッズに焦点を当て、マーケティングの視点から掘り下げていきます。
防災グッズをインテリアに
防災グッズをインテリアとして楽しんでいるという話題です。
「デザインの優れているアウトドアグッズを防災用品として選んでいる」 と話すのは千葉県我孫子 (あびこ) 市の会社員、城地美鈴さん (52) 。自宅で災害対策を始めたきっかけは東日本大震災だ。用意したポータブル電源やランタン、小型ガスコンロはいずれもキャンプ用品で、リビングなどの棚に自然な形でディスプレーしてある。「日常的に目にし、手に触れることで、非常時にも平常心を保てると思う」 と話す。
(中略)
代表的なのは、ランタンやランプを日常的に間接照明やアクセント照明として使うケースや、クーラーボックスを水や保存食の備蓄容器として使うアイデアだ。
(中略)
茨城県守谷市の主婦、奥主美由紀さん (37) は、毎年3月と9月に家族で防災グッズの見直しをするのが習慣となっている。22年9月には災害トイレを、以前持っていたデザイン性の低い派手なパッケージのものから、ナチュラルテイストなものに買い替えた。「以前のものは目立ってしまうので見えない所にしまいこんでいたが、新たなものはかわいいので、トイレの戸棚にそのまま見せる収納ができるようになった」 と笑う。
ここまでをまとめておくと、
- 防災グッズをデザイン性の高いものにしインテリアとして楽しむ人が増えている
- たとえば、ランタンやランプを間接照明として使用したり、クーラーボックスを備蓄容器として活用している
- デザイン性の高い防災グッズを日常的に目にしておくことで、非常時にも平常心を保てるという意見も
学べること
では今回の事例から学べることを掘り下げていきましょう。キーワードは 「エクストリームユーザー」 です。
先進的な使い方からの機会発見
エクストリームユーザーとは、尖った嗜好や先進的な使い方をする人たちです。
こうした人たちは身近にぴったりの商品がないため、自分たちで工夫して使うことがあります。エクストリームユーザーは売り手が考えもつかなかった商品の使い方を自ら作り出しています。
防災グッズの事例で言えば、従来は防災グッズは 「もしものためにしまって保管しておくもの」 で、日常生活では見えないところに置かれていました。しかし一部の人は防災グッズをインテリアとして使い、積極的に見えるところに置いていたわけです。
学びを一般化すると、エクストリームユーザーの用途や使い方をうまく取り入れることで、新しい商品開発やマーケティングに活かせます。お客さんに今までになかった新しい価値を提供できるのです。
価値イメージの書き換え
防災グッズのインテリア利用は 「パーセプションチェンジの事例」 と見ることができます。パーセプションとは知覚や認識のことで、マーケティングの文脈でのパーセプションとは 「価値イメージ」 のことです。
お客さんの 「良い ◯◯ とはこういうもの」 という認識がアップデートすることが、マーケティングに求められることです。
例えば 「良い防災グッズはインテリアとして普段から飾っておけるもの」 という防災グッズへの価値イメージを提案することで、それを魅力的に思ってもらえれば相手の価値観が変わり、防災グッズはしまわずにむしろ積極的に見えるところに置くようになります。
マーケティングの役割
このようにマーケティングでやっていくことは人々の価値認識を変えることです。価値認識が変わるということは、選ばれる基準が新しく変化するということです。お客さんがまだ気づいていない魅力や価値を提案し、パーセプションチェンジを狙うというわけです。
マーケティングは、商品やサービスに対するお客さんの価値イメージをいかに良いものに持ってもらうかの知恵比べです。マーケティングは商品やサービスの価値を伝え、お客さんの価値認識を変化させる役割を担っているのです。
まとめ
今回は防災グッズがインテリアとして人気を呼んでいるという話題をご紹介し、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 尖った人を味方にするマーケティング
- 先進的な使い方からの機会発見: エクストリームユーザーの独自の用途や使い方を発見することで、新しい商品開発やマーケティングに活かせる
- 価値イメージの書き換え: 新しい魅力や価値を提案しお客さんの価値認識を変えられれば、価値観が変わり選ばれる基準が新しくできる
- マーケティングの役割: 商品へのお客さんの価値イメージをいかに良いものに持ってもらうか。お客さんの価値認識を変化させる役割を持っている
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