ビジネスの世界では、新しいお客さんを増やすことは常に課題となっています。ではどのようにしてお客さんの興味を引き、新規顧客を獲得すればいいのでしょうか?
今回は、コーヒー飲料の 「ジョージア」 のブランドリニューアル事例を通じて、効果的なマーケティングを一緒に学んでいきましょう。
ジョージアが過去最大のリニューアル
出典: 日経クロストレンド
日本コカ・コーラのコーヒー飲料 「ジョージア」 が登場したのは1975年です。それ以来50年近くにわたって飲用され、容器入り飲料 (RTD) のコーヒーブランドとして 「定番」 ともいえる地位を確立しています。
そんなジョージアがブランドを再定義し、2023年3月に6種類のペットボトルタイプを新たに発売しました。
今回のブランド刷新は、ジョージアが誕生して以来で最大規模とのことです。
リニューアルの狙い
ジョージアのリニューアルの背景や狙いについて見てみましょう。
日本コカ・コーラがジョージアブランドを刷新する狙いは、若年層および女性層へのアプローチだ。
日本コカ・コーラによれば、1人当たりの年間 RTD コーヒー購入金額を年代別の指数で比較すると、RTD コーヒーを習慣的に飲用している50代を100とした場合、30代は77、20代後半が55、20代前半に至っては36と、年代が下がるにつれて指数も下がる傾向が見て取れる。
(中略)
朴部長 (引用者注: 日本コカ・コーラ マーケティング部コーヒー事業部の朴英俊部長) は 「実際は若年層や女性層もカフェなどでコーヒーを飲んでいる。またコンビニのコーヒーを買う人も増えている。そうした人たちを RTD コーヒーの世界へ誘うことができるかどうかが、今後の RTD 市場での成長の鍵を握ると考えている」 と、ブランド刷新の理由を説明する。
マーケティングコミュニケーション
ブランドロゴも14年ぶりに変更 (出典: 日経クロストレンド)
従来の働くおじさん向けというジョージアのイメージから脱却し、50代の消費者をつかんだまま、若年層・女性層にも手を広げる戦略でマーケティングコミュニケーションが展開されています。
味や製法にはあえて焦点を当てず、消費者に対してシンプルでわかりやすい訴求をしているのが特徴的です。
ジョージアが新しいブランド価値として掲げたのが 「自分らしさ目覚める、ジョージア」 だ。「ジョージアは、これまでの "働く人がさらに頑張るための象徴" から、若年層・女性層も含む幅広い世代に向けた "自分らしく生きることの象徴" に生まれ変わる」 と朴部長。
若年層・女性層の獲得に向けた施策の一つに、「毎日って、けっこうドラマだ。」 をメッセージとして掲げるテレビ CM がある。「コーヒーを飲んで、ふと思った。普通の一日なんて、きっとない。」 というナレーションから始まる新 CM は、何げない日常の中にもかけがえのない瞬間があること、ジョージアがそうした気づきを与える存在であることを伝えていくストーリーになっている。
ジョージアが若年層・女性層の獲得に向けた施策の1つに、「毎日って、けっこうドラマだ。」 をメッセージとして掲げるテレビ CM があります。
この CM は「コーヒーを飲んで、ふと思った。普通の一日なんて、きっとない。」 というナレーションから始まります。何げない日常の中にもかけがえのない瞬間があること、ジョージアがそうした気づきを与える存在であることを伝えていくストーリーになっています。
リブランディングからの新しいジョージアの世界観を伝える CM です。
学べること
では、今回のジョージアの事例から学べることを掘り下げていきましょう。
カテゴリーの新規顧客
ジョージアのリニューアル事例は、新規のお客さんの獲得に学びが得られます。
ここで言う新しいお客さんとは、カテゴリー自体の新規顧客です。RTD (Ready-To-Drink) という缶入りコーヒー自体をそれほど飲んでいない人たちをターゲットにしています。
カテゴリーから商品へと誘導する必要があるため、豆の種類や抽出方法などのウンチクはあえて強調していません。その代わりに、ブランドの世界観、コンセプト、ベネフィットを訴求しています。
具体的には、「自分らしさ目覚める、ジョージア」 を掲げることで、自分らしく生きることの象徴として訴求しています。また、テレビ CM では 「毎日って、けっこうドラマだ。」 というメッセージから、何げない日常の中にもかけがえのない瞬間があること、ジョージアがそうした気づきを与える存在であることをストーリーにしています。
初級者へのマーケティング
この事例からの学びを一般化してみましょう。
新規のお客さんの獲得には、商品やサービスの詳しい機能やスペック、仕様のことを説明するよりも、「こういう価値がある」 「こんなに便利」 「使い方はカンタン」 などの価値やブランドイメージ、ストーリー、商品・サービスが持つ世界観を伝えると効果的です。
コミュニケーションや訴求する相手の見極めが大事で、相手が詳しい上級者なのか、それとも初心者かによってアプローチを変える必要があります。
上級者には機能やスペックの詳細を伝えるのが良いでしょう。一方の初心者にはブランドイメージ、ストーリーや世界観を見せて共感してもらうアプローチを取ります。詳しい仕様を説明するのは、獲得したお客さん (初級者) が中級者以上になってからで十分です。
顧客文脈に合わせる
訴求内容やアプローチ方法は、重視するお客さん次第です。
カテゴリー新規のお客さんへはいきなり商品を提示するのではなく、もっと手前からカテゴリーの魅力から始めて、丁寧に世界観や価値観を伝えていくといいでしょう。
つまり、伝える相手の文脈 (顧客文脈) に合わせることが重要です。
このイメージを 「鍵穴と鍵のたとえ」 で考えると理解しやすいです。
お客さんの状況や求めることなどの顧客文脈を 「鍵穴」 、ブランドからのベネフィットの切り出し方を 「鍵」 に見立てるという考え方です。
「お客さんの文脈 (鍵穴) 」 と 「ベネフィット (鍵) 」 が合致している状況が、価値が成立している状態です。お客さんの心のドアが開いて、商品やサービスを欲しいと思ってもらえます。
売り手側がお客さんが持つ鍵穴を理解し、相手の文脈に合う鍵をつくり売り手が寄り添っていく。商品という鍵の魅力の訴求はこうした土壌が整ってから行うことで、効果的なマーケティングになるのです。
まとめ
今回はジョージアのリニューアル事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 新しいお客さんの獲得
- 訴求する相手が初級者か上級者かによってアプローチ方法を変えることが大事
- カテゴリーの新規顧客には詳細な仕様や機能を伝えるよりも、価値やブランドイメージ、ストーリー、世界観を伝えることが効果的
- 売り手が顧客文脈を理解し、相手の文脈に合わせて寄り添う。商品の詳細の説明や魅力の訴求は下地が整ってから行うといい
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