投稿日 2023/07/21

行動分析学でエコを刺激!サントリー 「やさしい麦茶」 のマーケティングの裏側とは?

#マーケティング #インセンティブ設計 #行動分析学


サントリーの 「やさしい麦茶」 が、消費者のエコ行動を促す仕掛けを展開しています。

今回はこの事例に行動分析学の視点も取り入れ、まわりへの影響力の高め方を紐解きます。

日々のお仕事や人間関係で活かせる知識を手に入れるために、ぜひ一緒に読み進めていきましょう。

ラベルの秘密


出典: ITmedia

ご紹介したいのはサントリーの 「やさしい麦茶」 の事例です。

 「やさしい麦茶」 には、あまり知られていないブランド公式キャラクターが存在する。名前は 「やさしいペンギン」 、通称 「やさペン」 。ラベルの表面に、"遠慮がち" に顔を出しているかと思えば、裏面にやさペンのマンガが掲載されている。なぜあまり目立たない位置にキャラクターを掲載しているのか。

 「1つは、やさペンに気付いた人がほっこりと嬉しい気持ちになれることを意識しました。もう1つは、エコの観点から、ラベルをはがすきっかけになればと考えました」 

こう話すのは、同社 (引用者注: サントリー食品インターナショナル) ブランド開発事業部の柴尾洋香さんだ。
ラベルの裏に隠れているマンガ (出典: ITmedia

ペットボトルのラベル裏に隠れたキャラクターのマンガによって、エコな行動を促していました。

ラベル裏のマンガの存在も、SNS を通じて静かに知られるようになった。マンガに台詞はなく、イラストだけのシンプルなものだが、ブランドが持つ 「やさしさの循環」 を表現するものとなっており、全5種類を用意している。

 「メーカー側がボトルからラベルを外すよう促すよりは、気付けば資源の分別につながっていた、という流れの方がいいのではないかと考えました」 (柴尾さん) 

学べること


では、サントリーの 「やさしい麦茶」 の事例から学べることを掘り下げていきましょう。

補助線としてご紹介したいのが 「行動分析学」 です。

行動分析学


行動分析学は心理学の1つで、人が行動する動機を行動の前後に見出し、行動の要因を科学的に分析・検証する学問です。

行動分析学のコアとなる考え方は、「きっかけ - 行動 - 見返り」 からなる3つのステップです。

見返りにはメリットとデメリットの二種類があります (ちなみにメリットは行動分析学では 「好子 (こうし) 」 、デメリットは 「嫌子 (けんし) 」 と呼びます) 。

人が行動を起こす・起こさないを整理すると、

✓ 行動をする
  • (その行動をすると) メリットがあるから
  • (行動すれば) デメリットがなくなるから

これを逆に捉えれば、行動を起こさないのは、

✓ 行動をしない
  • (それをやっても) メリットがないから
  • (やってしまうと) デメリットがあるから

このように 「メリットのある・なし」 「デメリットのある・なし」 という視点で行動の見返りを見極め、具体的に何が動機となって行動するかを掘り下げるのが行動分析学です。

ちなみに行動分析学では、見返りが行動後60秒以内に発生すると、行動を呼び起こす影響が大きいとされます。

デメリットが生じる vs メリットが生まれる


ここでサントリーの 「やさしい麦茶」 に話をつなげてみましょう。

通常のペットボトルのラベルは、はがさないとエコではないという罪悪感が生じるため、消極的にラベルを取り外していて、どこか面倒さを感じます。行動分析学で言えば 「デメリットがなくなる」 という見返りがあるから行動をとるわけですが、どこか義務的です。

一方の 「やさしい麦茶」 は、ラベルを剥がすことで隠れキャラクターが現れるため、能動的に行動することが期待できます。見返りとしてにメリットがあるからので、積極的な行動を生むわけです。

相手の行動を促す方法


今回の事例からの学びを一般化してみましょう。

行動分析学の考え方やアプローチは、お客さん、上司や同僚などの相手の行動を起こす方法に活用できます。

相手が行動を起こすための見返りを用意し、行動の動機付けをサポートするといいでしょう。とってほしい望ましい行動をすることでメリットが生じるようにし、有益なモノやコトが得られ楽しい体験を提供します。あるいは行動をしないとデメリットが生じる仕掛けもうまく設計すれば効果的です。

行動分析学では行動後60秒以内の見返りがポイントだったので、相手が行動を起こした後にすぐに見返りを感じられるように工夫をするといいでしょう。

相手の感情に訴えかけるストーリーやデザインを取り入れることで、行動を起こしやすくなります。例えばサントリーの 「やさしい麦茶」 では、隠れたキャラクターを用意することで消費者が楽しみながらラベルを剥がすことを狙いました。

以上のように人に動いてもらうために、行動分析学を応用してみるといいでしょう。


まとめ


今回はサントリーの 「やさしい麦茶」 と行動分析学から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 相手の行動を促す方法
  • 相手が行動を起こすための見返りを用意し、行動の動機付けをサポートする。見返りとは、行動するとメリットが生まれる、行動しないとデメリットが生じること
  • 行動後60秒以内に見返り (例: 楽しい体験というメリット) が発生するように工夫し、行動を呼び起こす影響を大きくするといい
  • 感情に訴えかけるストーリーや設計を取り入れるのも効果的


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。