投稿日 2023/07/26

ブランディングの本質を探る。ヤッホーブルーイングの 「隠れ節目祝い」 に学ぶ成功ポイント

#マーケティング #ブランド #カスタマーサクセス


どうすればお客さんの心をつかみ、ブランドの価値を高めることができるのでしょうか?

今回は、ヤッホーブルーイングの 「隠れ節目祝い」 の事例から一緒にその秘訣を探っていきます。ビジネスに活かせる新たな発見を見つけにいきませんか?

隠れ節目祝い by よなよなエール


ご紹介したいのはヤッホーブルーイングのユニークな取り組みです。

 「よなよなエール」 や 「水曜日のネコ」 といったクラフトビールで知られるヤッホーブルーイング (長野県軽井沢町) が3月2日から、「隠れ節目祝い by よなよなエール」 という企画をスタートした。人生の節目といえば就職・結婚・還暦などが一般的だが、同社は、「卒乳した」 「お弁当作りを終えた」 「猫を飼った」 「転職した」 など、日常生活のちょっとした節目に着目。こうしたタイミングを 「隠れ節目」 と定義し、祝おうというのだ。

同社では、「卒乳してビール飲めるねセット」 「イヤイヤ期卒業乾杯セット」 「寝かしつけ卒業乾杯セット」 「お弁当づくり卒業乾杯セット」 「あなただけの卒業乾杯セット」 と題した、5種類の隠れ節目祝いセットを用意。セット内容は、卒業証書1枚とよなよなエール2本で、特別仕様の証書入れに入れて送付する。
出典: ITmedia

おもしろい 「隠れ節目祝い by よなよなエール」 ですが、開発の背景を見てみましょう。

―― この企画を開始するきっかけは何でしょうか?

河津さん: 弊社ではクラフトビールの定期便サービスを行っているのですが、その契約を、妊娠を機にやむを得ず解約されるお客さまが多数いたことです。

そういったお客さまは一時的にアルコールから離れるものの、好きだったビールを再び飲める日を楽しみにしており、卒乳をしたタイミングなどで再開していることが分かりました。こうしたお客さまのために何かできないかと考え、今回の企画を立ち上げました。

 (中略) 

弊社は社員の半分が子育て経験者であり、自分たちの実体験から 「ビールは子育てと密接な関係がある」 と気付きました。卒乳のような子育てのタイミングは目立たないけれど、30 ~ 40代の子育て世代にとっては大切な人生の節目です。仕事に家事に忙しい子育て世代に、この企画を通して 「ゆっくりとこれまでを振り返る時間」 を提供できればと思いました。

学べること


では、ヤッホーブルーイングの 「隠れ節目祝い by よなよなエール」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

お客さんのハッピーを彩る価値


ヤッホーブルーイングのお祝いサービスは、お客さんのうれしい瞬間を増幅させるようなアプローチです。

お客さんが日常生活のふとした節目で喜ぶ瞬間を 「カスタマーサクセス」 と捉え、お客さんと一緒に祝うことで、お客さんのハッピーを彩る価値をもたらしています。直接的なカスタマーサクセスを生み出さなくても、良い体験に花を添え、喜びを倍増させることに存在意義を見出しているわけです。

カスタマーサクセスからのブランディング


ご紹介している 「隠れ節目祝い by よなよなエール」 のお祝いサービスは、ヤッホーブルーイングのブランディングにもつながっています。

ブランドとは、お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス、または企業です。好ましい感情とは、好き、共感、満足、誇り、憧れ、応援したい気持ちです。商品やサービスに対して深い好ましい感情になるほど強いブランドです。

ブランディングとは、お客さんから好ましい感情を商品・サービスに持ってもらうための 「働きかけ」 です。

そしてブランドが生まれるプロセスは、良いユーザー体験からです。体験をしたときに好ましい感情移入が起こり、お客さんの頭や心の中で価値イメージが形成されることで、特別な存在へと昇華されます。

ヤッホーブルーイングのお祝いサービスは、次のようなプロセスを通じてブランディングを実現しています。

  • お客さんの日常生活において、ちょっとした節目でうれしい瞬間が発生
  • ヤッホーブルーイングがその喜びを祝う 「隠れ節目祝い by よなよなエール」 を提供
  • 喜びが増し、お客さんがヤッホーブルーイングに好ましい感情を抱く
  • 体験と感情が記憶として残り、良い価値イメージが醸成される
  • カスタマーサクセスに寄り添ったことで自分たちもブランドになる

このように、「隠れ節目祝い by よなよなエール」 はお客さんのうれしいタイミングを一緒に祝い合うことで、「体験 → 良い感情移入 → 価値イメージ形成」 を実現しているのです。


まとめ


今回は、ヤッホーブルーイングの 「隠れ節目祝い by よなよなエール」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ ブランドの本質
  • ブランドとは、お客さんからの好ましい感情が伴った商品やサービス。商品やサービスに対して深い感情が伴っているほど強いブランド
  • ブランディングはお客さんからの好ましい感情を商品・サービスに持ってもらうための働きかけ
  • ブランドができるプロセスは 「体験 → 良い感情移入 → 価値イメージ形成」 。良いユーザー体験のときに好ましい感情が生まれ、お客さんの頭や心の中で価値イメージが形成されることで特別な存在としてブランドとなる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。