マーケティングを成功させるためには、「下準備」 が重要になります。
どんなにすばらしい商品でも、それを受け入れる心理状態でなければ、訴求されてもお客さんにとっては唐突感のある押し売りになりかねません。
より効果的な価値提案の方法をぜひ一緒に学んでいきませんか?
腸内環境の検査サービス
キリン HD が、腸内環境の検査サービス 「MicroBio Me (マイクロバイオミー) 」 を始めました。
検査をすると、腸内菌の種類や数が精密にわかります。
想定価格 (税込み) は3万9000円 ~ 5万円程度。採便から6 ~ 9週間で結果がわかり、健康診断のように最良の A から E まで5段階で腸内環境を評価する検査リポートを送付する。7月時点で約60の医療機関で取り扱っている。
不足している有用な細菌や、必要な細菌が好む食物繊維が含まれた食材などがわかる。患者は医師からリポートを元にした説明や腸内環境の改善に向けた指導を受けられる。
(中略)
腸内には約1000種類、100兆個の腸内細菌が存在しているとされ、糖尿病や潰瘍性大腸炎などの疾患から、睡眠や肥満などの健康状態とも関係があることがわかっている。キリンの調査では腸内環境を整えるために日常的に何かを実施している人が 93% いる一方、「腸内環境がとても良い」 と回答した人は 5.6% にとどまっているという。
カルビーも同じような取り組みに力を入れています。「ボディ グラノーラ」 です。
カルビーが4月に個人の腸内細菌に合ったシリアル食品グラノーラを購入できる 「Body Granola (ボディーグラノーラ) 」 を始めた。事前の検査で、57のタイプに分類した腸内細菌の集合体 「腸内フローラ」 のうち自分がどれに該当するかを把握する。
タイプに合わせておすすめされたトッピングを全6種類から3つ選び、ベースとなるグラノーラに混ぜて利用する。価格は検査が税込み1万780円、グラノーラの定期購入が1カ月20食分で3780円だ。
学べること
ではここまで見てきたキリンとカルビーの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
この事例から学べるのは、「お客さんの課題感」 を醸成することの大切さです。
課題感の醸成
自分の食事内容や腸内環境などの健康への意識の高い人は、自分の腸内の状態は気になるものです。
しかし従来は具体的に今はどういう状態なのかは知る術はありませんでした。たとえわかったとしても、それはなんとなくの感覚のレベルに過ぎません。自分の腸内環境のことは自分1人では調べられず、どうやって改善していいかもわからなかったわけです。
腸内環境の可視化による提供価値
キリン HD の 「マイクロバイオミー」 やカルビーの 「ボディ グラノーラ」 は、科学的な検査にもとづいて腸内環境を数値で可視化します。消費者へは専門サービスを受けることでしかわからない情報を提供しています。
具体的には 「マイクロバイオミー」 では不足している有用な細菌や、自分に必要な細菌が好む食物繊維が含まれた食材がわかり、医師からのレポートや説明から腸内環境の改善に向けた指導も受けられます。
また、カルビーの 「ボディ グラノーラ」 では、検査結果から個人の腸内細菌に合ったシリアル食品グラノーラを提示しています。これらに利用者にとっての価値があるのです。
売る前の下準備
こうした腸内環境の検査結果を見て、サービス利用者は自分の腸内環境の状況を知ります。そして商品の提案を受けることで、具体的に何をどのように改善すればいいかがわかり、解決したいと思うようになるわけです。
このような 「下地」 を整えた上で、キリンやカルビーは利用者1人ひとりに最適化された腸内環境を整える商品を提案しています。
キリンやカルビーの事例が教えてくれるのは、商品を売ろうとする前の 「下準備」 の重要性です。逆に言えば、相手に心理的な受け入れ態勢ができていない中でいきなり商品を提案しても、お客さんにとっては唐突感があり、ともすれば拒否感が生まれ、興味を持ってもらえないでしょう。
今回の話では、事実 (検査結果) と意見 (必要な食材や商品の提案) の二段階のステップを踏んでいるからこそ、お客さんに受け入れてもらえるのです。
価値提案のプロセス
今回の事例からの学びを一般化すると、マーケティングに活かせる価値提案のプロセスは次の3ステップになります。
✓ 価値提案のプロセス
- お客さんを定義する
- お客さんに持ってもらいたい課題感を示す
- 課題感が明確になり自分ごと化され、解決したいと思ってもらえて下準備ができた後に、解決策として商品やサービスを提案する
まとめ
今回はキリン HD やカルビーの腸内環境検査サービスから、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 商品を売ろうとする前の下準備 (課題感の自分ごと化) が大事
- 下地が整っていないのにいきなり商品を提案しても、お客さんにとっては唐突感があり、ともすれば拒否感が生まれて興味を持ってもらえない
- 価値提案は三段階のプロセスで進める。① ターゲット顧客を明確にし、② お客さんに持ってもらいたい課題感を示す。③ 課題感が醸成されたところで具体的な解決策を提案する
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