投稿日 2023/10/22

ティラノサウルスはこう変わった!恐竜に学ぶ OODA ループからの顧客理解アンラーニング

#マーケティング #アンラーニング #顧客理解

今回は、恐竜の話をマーケティングにつなげます。

ティラノサウルスが教えてくれる、「アンラーニング」 をキーワードにお客さんを理解する秘訣を紐解きます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

ティラノサウルスの姿勢の変化


ティラノサウルスの立ち姿は、専門家の間で過去30年の中で解釈が大きく変わりました。

左が以前の直立, 右が今の通説 (出典: JOURNAL OF GEOSCIENCE EDUCATION 6

かつては直立で描かれていた


1990年代以前は、ティラノサウルスは直立した姿勢で描かれていました。カンガルーのような姿勢です。

ちなみにゴジラは、かつてのティラノサウルスがモデルなので直立です。

ティラノサウルスが直立した姿勢で描かれていた理由はいくつかの要因があります。

  • 1990年代以前はティラノサウルスの化石があまり発見されておらず、その形態や生態について十分な証拠情報がなかった

  • ティラノサウルスの名付け親となった古生物学者のヘンリー・オズボーンが、最初のティラノサウルスの復元図をカンガルーが立ったような姿勢で描いた

  • 直立姿勢のティラノサウルスは、より威圧的で恐ろしい印象を与える。そのため映画やテレビ番組などの娯楽作品では、直立した姿勢のティラノサウルスがよく描かれていた

今は前傾姿勢が通説


しかし、1990年代後半にティラノサウルスの尾の骨が新たに発見されました。

尾の骨には次のような特徴が見られました。

  • ティラノサウルスの尾の骨は、直立した姿勢では折れてしまうような関節があったり、体重を支えきれない形状をしていた

  • 前かがみの姿勢を支えることができる痕跡が残ってた

この発見によりティラノサウルスの尾は、直立した姿勢では身体を支えることはできないとされました。

また、もしティラノサウルスが直立の姿勢であれば地面に尻尾が付き、歩くと地面に引きずった跡が残るはずです。しかし尻尾の跡が残っている形跡が発見されないことも、ティラノサウルスは前傾姿勢だったという説につながりました。

ティラノサウルスの姿勢に対する解釈が変わったのは、古生物学研究の進歩によるものです。

古生物学研究では化石の発見が重要です。化石から古生物の形態・生態を推測することができます。ティラノサウルスの尾の骨の発見は、恐竜研究の大きな進歩に貢献しました。


ビジネスパーソンへの示唆


では、ティラノサウルスの姿勢の捉え方の変化から、ビジネスへの学びを考えてみましょう。

結論から言うと、ビジネスパーソンへの示唆は 「アンラーニングの重要性」 です。

アンラーニングとは


アンラーニングとは、従来の知識や経験、先入観を捨て、新しい視点や方法について学び直すことです。

ティラノサウルスの姿勢についての変化はアンラーニングと捉えることができます。新しい発見がされたことで、直立姿勢への考え方が見直され、前かがみの姿勢に解釈が変わりました。

私たちビジネスパーソンはここから学びが得られます。

顧客理解へのアンラーニング


ビジネス、たとえばマーケティングの文脈で考えると、アンラーニングは顧客理解において重要な役割を果たします。

お客さんは変わり続け市場や顧客ニーズは常に変化しているため、古いデータ・情報や経験にもとづく顧客イメージに固執すると、新しいトレンドや生活者の行動・心理変化を見逃してしまいます。

お客さんの変化に対応し、環境変化に適応するためには、今までのお客さんへの認識や理解、古い知識を捨て、新たな情報を収集し、常に理解をアップデートしていく、つまりアンラーニングが必要となるのです。

アンラーニングの方法 (OODA ループ) 


ではどうすればアンラーニングができるのでしょうか?

最後にこの問いを掘り下げていきましょう。

補助線としてご紹介したいのが OODA (ウーダ) ループです。アンラーニングに OODA のアプローチが活用できます。

OODA ループとは意思決定と実行のプロセスです。OODA は4つの頭文字です。


✓ OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集し観察する
  • Orient (状況判断) : 観察内容を掘り下げ意味合いや示唆を抽出する
  • Decide (意思決定) : 状況判断にもとづいて決断をする
  • Act (行動) : 実際の行動に移す

ループという言葉が入っているように OODA は何度もまわすことが重要です。

OODA ループは、変化する環境において真価を発揮します。

お客さんの理解でアンラーニングをするために OODA に当てはめると、次のようになります。

✓ OODA と顧客理解

  • Observe (観察) : お客さん1人ひとりを観察する。アンケートやインタビューからお客さんの定量データと定性情報を得る。今までの先入観を持たずに捉える

  • Orient (状況判断) : 観察内容や定量・定性の情報について意味合いを掘り下げ、示唆を得る

  • Decide (意思決定) : 新たな理解にもとづいて何をすべきかを決める

  • Act (行動) : アンラーニングをともなった新しい顧客理解からマーケティング戦略や施策に落とし込み実行する

OODA はループなので、このプロセスは1回で終わるものではありません。戦略からの実行をしたことは観察から次の OODA に入ります。

アンラーニングからの既存の知識を捨て、新たに学び直しを繰り返すことで、常に最新の顧客理解の状態になれるのです。


まとめ


今回は、ティラノサウルスの姿勢が以前と今では通説が変わったという話を取り上げ、ビジネスへの示唆を見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 顧客ニーズや市場トレンドは常に変わる。変化に適応し今のお客さんの行動と心理を理解するためには、古い知識や経験に固執せずに捨てて、新しい視点や方法で学び直す 「アンラーニング」 が不可欠

  • OODA ループは 「観察」 「状況判断」 「意思決定」 「行動」 の4つのプロセスから行う意思決定と実行のプロセス

  • OODA を繰り返すことでアンラーニングにつながる。お客さんの理解にアンラーニングと OODA を入れ常に最新の顧客理解の状態を目指そう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。