投稿日 2023/10/09

産後ケアアプリ 「mamaniere (ママニエール) 」 。お客さんライフステージが変わっても離反されない方法

#マーケティング #顧客接点 #価値提供

大切なお客さんがある日突然、自社の商品やサービスから遠ざかったらどうしますか?

お客さんのライフステージが変わったことが、静かなサヨナラのきっかけになってしまったのかもしれません。では、どうすればお客さんの心をひきつけ続けることができるのでしょうか?

今回は、この問いを掘り下げます。お客さんと長期的な関係を築く秘訣をぜひ一緒に探っていきましょう。

顔写真で産後ケア


ポーラが、赤ちゃんを産んだ後の女性の顔写真から疲労状態を分析するスマホアプリ 「mamaniere (ママニエール) 」 を開発しました。

分析画面のイメージ (出典: PR TIMES

診断画面のイメージ (出典: PR TIMES

ママニエールでは分析結果をもとに、女性の産後特有の悩みに応じたケア情報が提供されます。

サービスはスマートフォンアプリをダウンロード後、出産日や住所、生年月日といった基礎情報を入力する。その後、「最近よく眠れていますか」 「イライラすることは多いですか」 「食欲はありますか」 など10項目の質問に答えていく。

また、「今あなたが心ひかれるシーンを選んでください」 という趣味嗜好を知るための質問もあり、「赤ちゃんとゆったりしている」 「ゆっくり休んでいる」 などの選択肢から回答する。

終了すると、30秒ほどスマホのカメラで自分の顔を撮影する。心拍数や血流などをもとに疲労状態を分析する。

 (中略) 

分析結果を受けて産後特有の悩みに対するケア方法やアドバイスなどを提供する仕組みだ。例えば、「不調の芽を見つけたら、ひとやすみ」 など、子育てに悩む女性に向けた言葉が表示される。

その後、個人の悩みや希望に合わせ、企業の提供するサービスも紹介する。子育て支援関連や宿泊施設などの割引クーポンがもらえる。まだ対象地域は一部にとどまるが、近隣にある子育て支援施設なども知ることができるようにしている。

学べること


ではポーラのスマホアプリ 「mamaniere (ママニエール) 」 から、学べることを掘り下げていきましょう。

ライフステージの変化と顧客の離反


お客さんのライフステージが変わると、商品の利用や購入が一時的に止まったり、場合によってはそのまま離反し戻ってこないこともあります。

ポーラの課題感はまさにここでした。

育児中の女性は多忙で化粧を忘れがちになったり、一時的につながりが途絶えてしまったりすることがポーラの課題でもあった。

今回のアプリでは、育児中の女性とも継続的につながりを保てる可能性がある。担当者は 「出産直後の女性を追った化粧品データはほとんどない。このアプリで集めたデータをもとに新領域の商品展開も探っていきたい」 と期待する。

離れてしまいそうなお客さんに対して、無理やり利用や購入を強いることはできません。やってしまうとお客さんの心に響かず、ともすると嫌われてしまうでしょう。

つながり続けたいと思える顧客価値


では、どうすればお客さんとのつながりを維持できるのでしょうか?

ポーラが開発したスマホアプリ 「ママニエール」 のアプローチがヒントになります。

今回の事例から学べるのは、お客さんのライフステージが変わったとしても継続的につながりたい、使いたいと思えるような、他にはない独自の価値を提供する重要性です。

そのためには、お客さんとの顧客接点をつくる必要があります。

そして、お客さんとの接点をつくっただけで終わらず、お客さんが自分からつながりたいと思ってもらえるような価値、たとえば利便性やうれしい・楽しいなどの感情的な価値があることが大事です。

顧客接点と価値実現


顧客接点を持つことでお客さんのライフステージの変化を捉え、お客さんのことを理解する手がかりが得られます。

顧客理解からお客さんにもたらしたい価値を定義し、見出した価値を商品・サービス、価格設定やプロモーションなどの商品開発やマーケティングに反映させます。

1人ひとりのお客さんの文脈に沿って価値提案を行い、顧客接点を通じて価値を提供し価値を実現していきます。顧客接点の充実、お客さんの深い理解、提供価値の向上を愚直にやっていけば、たとえライフステージが変わってもお客さんの離反を防げ、お客さんとの末永い関係を築けるのです。


まとめ


今回は、産後の女性をケアをするポーラのスマホアプリ 「ママニエール」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • お客さんのライフステージが変わったとしても継続的につながりたい、使いたいと思ってもらえるような、他にはない独自の価値を提供することが大事

  • 顧客接点を持つことでお客さんのライフステージの変化を捉え、お客さんのことを理解する手がかりが得られる

  • 顧客接点を充実させ、お客さんを深く理解し、提供価値を向上させることで、お客さんとの長期的な関係を築ける


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。