投稿日 2023/10/28

愛犬とのお出かけ支援 「ワンパス」 。お客さんとの関係を深めるゲーミフィケーション事例

#マーケティング #可視化 #ゲーミフィケーション

自社の商品やサービスを、お客さんは自己流で使っていないでしょうか?

実はもっとうまく便利に使えるのに、我流であるがゆえにお客さんはその機会を逃していないでしょうか?

今回は、愛犬家と飼い犬へのユニークなサービスを取り上げ、お客さんに 「より良い行動や使い方」 を取ってもらうためにはどうすればいいか、その秘訣を探ります。

ゲームの仕組みを効果的に取り入れる 「ゲーミフィケーション」 の視点からも紐解きます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

ペットとのお出かけを支援する 「ワンパス」 



ご紹介したいのは 「Wan!Pass (ワンパス) 」 です。犬のペットとのお出かけや旅行を支援する、 ペットオーナーのためのサービスです。

特徴は、飼い犬のしつけのレベルなどに応じて、愛犬を連れていけるお店が表示されるところにあります。

開始から約1年で登録店舗は1400店舗以上に増えた。

 (中略) 

アプリで愛犬の犬種や大きさ、ワクチンや狂犬病の予防接種証明書、しつけレベルを登録すると、入店できる店が地図上に表示される。

しつけレベルは認定資格を持つドッグトレーナーが現地試験で確認する仕組み。全20項目あり、「アイコンタクト」 「オスワリ」 「マテ」 など5つの基本動作はそれぞれレベル 2 ~ 3 まで設けられている。

たとえば 「マテ」 のレベル 1 は 「30秒以上マテをキープできる」 で、レベル 2 は 「飼い主が動く状況で30秒以上マテをキープできる」 、もっとも難度の高いレベル 3 では 「飼い主が動く、人が通る、環境音が流れる状況の中で飼い主の指示に従ってマテをキープできる」 ことが求められる。

学べること


ではワンパスの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

ワンパスから学べるのは、商品やサービスについてユーザーの習熟度を可視化することによって、お客さんとの関係性を深めるアプローチです。

自分ではわからない習熟度


人はしばしば、自分の主観的な評価にもとづいて判断をしたり行動をしています。自分では良いと思っても、実は世の中全般で見ればうまくやれていなかったりします。

自分の判断や行動、スキルレベルが他の人と比べてどの程度の水準なのかは、把握するのは実は難しいものです。

犬のしつけがまさに当てはまります。ペットへのしつけを自分では適切にできていると思っていても、専門家の目から見るとまだまだ改善の余地があるかもしれません。

客観的な評価とモチベーションの向上


そこでスキルへの熟達度の可視化が、お客さんやユーザーとのコミュニケーションで有効です。特に、ユーザーが自己流のやり方をしていて、他と比べてどの程度良いかがわからない場合においてです。

ワンパスではプロのトレーナーが犬のしつけレベルを評価しています。

具体的には、ユーザーはプロの視点から見た自分の飼い犬への訓練レベル (しつけのレベル) を客観的に知ることができます。しつけの項目が複数あることから、細かく何ができてきて何が足りないのかを理解への解像度が高くなります。さらに、しつけの改善方法を考えるきっかけになったり、具体的な方法を知ることもできます。

ワンパスが仕組みとしてうまいのは可視化の先が用意されていることです。

しつけへの訓練レベルが高ければ、愛犬のペットと一緒に行ける店舗が増えたり、特典がもらえるようになっています。しつけをより高いレベルまで目指そうという意欲を育み、モチベーション向上につなげています。

ゲーム要素を入れる自己認識と改善促進


それでは、ワンパスからの学びを一般化してみましょう。

お客さんやユーザーに 「自分のレベルを知ってもらう仕組みを入れられないか」 を考えてみると、マーケティングへの着想が得られます。

そして、ゲームの要素を入れることで、より良くしたいという動機づけを生む仕組みにできるとなおいいです。

ワンパスからの事例は、ゲーム要素を入れる 「ゲーミフィケーション」 の活用として示唆があります。次のようなプロセスをまわすことで、ユーザーやお客さんは愛着が高まったり、長く使い続けてくれ、お客さんとの関係を深めることができるのです。

✓ ゲーミフィケーションのサイクル (熱中してもらう流れ) 
  • 興味を持ってもらう
  • はじめの行動へのハードルを極力下げ、手にとってやってもらう
  • 達成への見返りを提供する
  • 次の挑戦のステージを魅力的に見せる


まとめ


今回は飼い犬のしつけレベルを可視化し、ペットとのお出かけを支援する 「ワンパス」 から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • ユーザーに商品・サービスの習熟度を共有することは、お客さんとの関係性を深める1つの方法

  • 自分のスキルレベルを主観的にしか評価できない場合は有効。客観的な評価を見える化することで自分の成長や改善を促すことができる

  • ゲームの要素をうまく取り入れ、興味を持ってもらい、行動につなげ、達成への見返りを提供し、次のステージを魅力的に示すといい


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。