投稿日 2023/10/08

おにぎりを選んだ決め手は 「ピンクだから」 。セブンが見出したデザインとストーリーからの競争軸

#マーケティング #差異化 #デザインとストーリー

お客さんが本当に求めているものは何でしょうか?

機能性だけではなく、見た目の美しさ、背後にあるストーリー、呼び起こされる感情。これらは商品を選ぶ決め手になることがあります。

今回は、セブン-イレブンのおにぎりの事例から、差異化をテーマに掘り下げます。どんな切り口からお客さんに選ばれるか。ぜひ一緒に学んでいきませんか?

セブンのピンク色おにぎり


出典: もくナビ

セブン-イレブンが自社おにぎり購入者の調査をし、予想外の発見をしました。

 「色がピンクだから」 。

セブンイレブンは近年、女性と若年層のシェアの低下に強い危機感を抱いており、これらのシェア拡大が、重要課題の1つだ。

そのため、セブンイレブンの中でも、特に女性と若年層の購入割合が高い商品である 「混ぜ飯おむすび きざみ梅」 の購入理由を調査し、今後の商品開発の参考にしようとした。グループインタビューでヒアリングを行ったところ、複数人から挙がったのが冒頭のようなコメントだ。

 「非常に驚いた。私たちの中では全く予想できなかった購入理由だった」 とセブンイレブン・ジャパン執行役員 企画本部 ラボストア企画部長の山口圭介氏は話す。もちろん、開発側は意図的にピンク色にしたわけではなく、マーケティング上も、ピンク色を訴求することは一切していなかった。

ここから山口氏は、女性や若年層にもっと来店してもらえるセブンイレブンを作っていくうえで、重要な示唆を得たという。「味などの機能性以外の部分も購入理由になる。ピンク色のおにぎりを食べる自分の姿がどういう状態なのか、どうありたいかということを、大げさに言えば自己実現としての購買理由を話してくれた。機能性だけでない、商品を買うことで得られる "意味” や "ストーリー" が物を買う理由になることを、売り手側も、発想できなければいけないと強く思った」 

ピンクのおにぎりを選ぶことの意味


セブンイレブンの事例から学べるのは、どうやって差異化をつくるかです。

一般的には、おにぎりを選ぶときの判断基準になるのは、価格以外には、具材、海苔、お米のおいしさや栄養価というおにぎりの機能的な要素です。一方の 「混ぜ飯おむすび きざみ梅」 の購入理由には 「色がピンクだから」 という声が複数人からありました。

機能性以外の側面である、見た目がかわいいなどのデザイン性が注目されているわけです。ピンク色のおにぎりを選ぶという行為は、単にお腹を満たすだけではありません。

ピンク色のおにぎりを食べる自分について自分自身はどう感じるのか、ピンクのおにぎりを選んだり食べている自分の姿が他人にはどう映るか。自分はこうありたいという自己表現や、もっと言えば自己実現の意味合いやストーリー性からピンク色に価値を感じているのです。


デザインとストーリーからの差異化


差異化への学びとして一般化すると、商品やサービスでの勝負の切り口を増やせられないかを考えてみるといいです。機能性だけでなく、デザインやストーリーといった競争軸に着目するといいでしょう。

ストーリーは、商品に込められた想いや開発秘話、お客さんの利用方法など、様々な切り口からつくり出すことができます。商品を開発する上での困難や成功体験、商品を使うお客さんのエピソードなどを共有することで、単なる商品ではなく、物語性を持つ商品になるのです。

機能以外でも独自性と便益をお客さんに提供できないか。こんな発想をしてみると新しい着想が得られます。


まとめ


今回はセブン-イレブンの事例をご紹介し、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 商品の差異化は機能面だけではなく、デザインやストーリー性も重要。新たな切り口を入れることで新しい勝ち筋をつくり出せる

  • 商品を保有したり使うことで自分はこうありたいという自己表現、自己実現への訴求も有効なストーリーテリングの要素。商品への感情的な期待や価値も購買意欲を高めることができる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。