今回は 「武士道」 を取り上げます。
サムライの価値観や行動指針を現代のビジネス、具体的にはマーケティングに当てはめ、マーケターとしてありたい姿を描きます。
武士道とは
武士道は、1899年に新渡戸稲造から英文で発表され、世界的な大反響をもたらしました。
当時の時代背景
当時の日本は文明開化の真っ只中にありました。押し寄せる西洋の新しい文化や価値観によって、社会全体が西洋化していた時代です。
変わりゆく姿を見た新渡戸稲造は 「日本人とはなにか」 を問い直そうと考え始めました。失われゆく日本の伝統精神をあらためて見直したときに、武士道こそが日本人の精神的支柱であり、世界に広く紹介することが日本のためになると考えたのです。
7つの理念
新渡戸稲造の武士道は、義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義の7つの要素から説明されます。
- 義
正しくあること。義とは人の道であり、武士の掟の中でもっとも厳格な徳目。武士にとって卑劣なる行動や不正なふるまいほど、忌 (いま) まわしいものはない - 勇
義のために行動する勇気。困難に立ち向かうこと。
ただし、無謀な行動や不必要な争いは避けるべきである。真の勇気は恐怖を乗り越えて正しい行動をとること - 仁
慈悲や他人を思いやる心。新渡戸は仁を 「愛」 と解釈した - 礼
礼儀。他人に敬意を払うこと。社会的な礼儀や規則、儀式を尊重し守る。自己の尊厳と他者への尊敬を示すことでもある - 誠
誠実さ、嘘をつかない心。言葉と行動を一致させ真実を保つことを求める - 名誉
他人から尊敬される名声。自分の行動が自己の名誉につながり、生き方に影響を与える - 忠義
主君に忠誠を尽くすこと。武士道における忠義は、困難な状況でも約束を守り、自分の義務を全うする
これら7つの理念が武士道を形成し、個々の武士が持つべき道徳的な態度と行動指針です。
7つは、1つ1つが相互に補完し合いながら全体の理想を形成します。
武士道からのビジネスへの示唆
武士は金銭そのものを忌み嫌いました。金儲けや蓄財とは、武士にとっては汚れた利益だと捉えられていました。
金銭や生命を惜しむ者は非難の的となり、これらを惜しみなく投げ出す者こそ賞賛されました。武士の子は、商売とはまったく無縁に育てられ、商売やお金のことを口にすることは下品とされ、知らないことはむしろ育ちのよい証拠だったのです。
このように武士とビジネスは一見すると対極的な関係にありますが、武士道で示される価値観や行動指針は、お金のやりとりが前提となる現代のビジネスパーソンにとって大いに学びがあります。
そこで、武士道を現代のビジネス、具体的にはマーケティングに当てはめてみます。
武士道とマーケター
武士道の理念を取り入れることで、マーケターとして目指すありたい姿が見えてきます。
- 義
会社のビジョンやミッション、ブランドが掲げる世界観やコンセプトを正しい道とする。
また 「お客さんのために」 も正しい道と捉える - 勇
ビジョンやミッション、コンセプトを実現したり体現するための行動を取る。軸としてぶれないようにし、顧客第一であり続ける。
難しい目的に挑戦し、新しい市場をつくり出す姿勢でいる。失敗を恐れず、変化する市場に適応するための新たなアイデアを提案し、実行する勇気を持つ - 仁
大切にするお客さんに真摯に向き合い、優しさを持って接する。直接のお客さんだけでなく、取引先や社内外の関係各社にも同じ姿勢を保つ - 礼
お客さんやマーケティングに関わるすべての人に対して、礼儀と尊敬の気持ちを持つ。他人を尊重すると同時に、自己尊厳を保つことも大事 - 誠
誠実な行動、一貫性、そしてオープンな姿勢。後ろ指を指されるような行動は避け、公平である。
ブランドとしての誠実さと透明性を維持し、商品やサービスが何を提供し、何を提供しないかをお客さんに伝えていく - 名誉
マーケティングは売上や利益を追求するだけでなく、ブランド、会社、そして自己の名誉を保つための活動と捉える。
自身の振る舞いが、お客さんからのブランドや会社への信頼に影響を与えるという認識を持つことが重要 - 忠義
会社に所属している以上は会社や組織の直属の上司に従うことになるが、それだけでなく忠義を尽くす相手はお客さん。
お客さんの成功が巡り巡って自社や自分自身の成功につながるという観点から、お客さんへの忠誠心を持つ
以上のように武士道を体現することで、マーケターはビジネスの成長と顧客満足度の向上に貢献することができます。
まとめ
今回は 「武士道」 を取り上げ、マーケティングへの示唆を見てきました。
最後にまとめとして、武士道の7つの理念を記しておきます。
- 義: 正しくあること
- 勇: 困難に立ち向かう勇気と行動
- 仁: 慈悲。他人を思いやる心
- 礼: 礼儀。他人に敬意を払う
- 誠: 真実。嘘をつかない誠実な心
- 名誉: 他人から尊敬される名声
- 忠義: 主君に忠誠を尽くす
武士道は今の時代でも我が身を振り返り、考えさせられる内容です。
こちらの現代語訳は、時々読み返しています。
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