つい、お客さんのこと "一括り" で見てしまっていないでしょうか?
自社の商品やサービスは、それぞれのお客さんが求める価値にフィットしていますか?
今回は、品川プリンスホテルの事例から、価値とは何かを問い直し、お客さん1人ひとりに合った価値を提供する方法を探ります。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
品川プリンスホテルが代替肉メニューを拡充
出典: PR TIMES
品川プリンスホテルが、運営するビュッフェ式のレストランで、植物由来の成分だけで作られた料理 (プラントベースフード) の提供数を大幅に拡充しました。
インバウンドの訪日外国人の宿泊客が増え、国籍や宗教に関係なく食事を楽しめるようにと、専用コーナーを常設し、おいしさを追求したプラントベースフードを提供していくとのことです。
レストラン内では、魚介やデザートなど料理コーナーが4カ所に分かれている。そのうち1つをサラダや大豆ミート、ナッツなどを使ったプラントベースフード専用のコーナーに変えた。7月から 「ハワイフェア」 を開催中で、ディナーではハワイをイメージした料理が20種類以上ならぶ。
大豆ミートを使用した生春巻きや、カシューナッツを発酵させてつくったフォアグラ風の料理、豆乳でチーズ風に仕立てたグラタンなどがある。大豆ミートの黒酢あんかけチキンは、大きな揚げ物がごろごろと転がっている。マーボー豆腐はひき肉風の大豆ミートを使用しており、見た目では動物性由来の食材を使ってないかは見分けがつかない料理ばかりだ。
「味も普段の作り方をした料理と遜色ないですよ」 と、福島慎太郎総料理長は語る。苦手なイメージを持つ人もいる大豆ミートは足元では改良が進んでおり、料理人でもこれを使った料理かどうかは言われなければ分からない程の味だという。メニュー開発を担当した吉村幸修さんは、淡泊になりがちな味について 「いろいろな野菜やキノコでダシをとったり、香辛料を加えたりして『物足りない』と思われないように工夫を凝らした」 と話す。
学べること
では品川プリンスホテルの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
お客さんからの価値認識の違い
今回の話から学べるのは、お客さんの設定と提供価値の関係性です。お客さんが誰であるかが変われば、評価される価値も変わってきます。
プラントベースフード (植物由来成分のみで作られた料理) のメニューが豊富にあるレストランは、一般的な感覚では特別高く評価されることはあまりないかもしれません。おそらくあってもいいかなと思う程度でしょう。
一方で、訪日外国人の中でも 「ヴィーガン (完全菜食主義者) 」 や 「ベジタリアン (菜食主義者) 」 など、食事に野菜を積極的に取り入れる人にとっては違います。サラダや豆類、ナッツ、フルーツなど数品しかないメニューでは満足はできないでしょう。プラントベースフードが多く取り揃えられていることは、重要度が高いわけです。
多くの人にとってプラントベースフードのメニューは 「あればいいな」 という "Nice to have" かもしれませんが、ヴィーガンやベジタリアンの人たちにとっては 「なくてはならない」 という "Must" なものなのです。
顧客設定と提供価値
この事例からの学びを一般化すると、お客さんが誰であるかを定めることで、何が求められているのか、そして自分たちがどの領域に注力すべきか、提供すべき価値の方向性が決まるということです。
何が価値であるかは、人によって、また同じ人でも状況によって変わります。価値は 「誰が、どういう状況で、何と比較するか」 によって決まるのです。裏を返せば、向き合うお客さんが明確になっていないと、どのような価値を提供すべきかの基準がブレてしまいます。
「自分たちのお客さんは誰か」 「お客さんに提供する本質的な価値は何か」 。これらの2つの問いかけは、商品開発やマーケティングで常に考え続けるべきことです。
まとめ
今回は、品川プリンスホテルがプラントベースフードを活用し代替肉メニューを拡充させているという事例から、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- お客さんによって、何に価値を見出すかの価値観は異なり、同じ人でも状況によっても変わる。価値は誰がどういう状況で、何と比較するかによって決まる
- 自分たちのお客さんを定義することで、何が求められ、どの領域に注力し、提供する価値は何かが定まる
- 自分たちのお客さんは誰か、お客さんに提供する本質的な価値は何かは、商品開発やマーケティングで常に考え続けるべき大事な問い
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