良いお米の要素は何でしょうか?産地?それとも品種でしょうか?
ご紹介する 「八代目儀兵衛」 は、別の視点から勝ち筋を見出しました。
今回は、八代目儀兵衛の事例から、逆張りの戦略で差異化をし、勝ち筋をつくる方法を探求していきます。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
八代目儀兵衛のブレンド米
出典: 八代目儀兵衛
今年2023年の春、ある出来事がコンビニ業界に驚きを与えました。国内最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、おにぎり商品の監修を外部企業に依頼すると発表したのです。
セブン-イレブンが、コンビニの顔でもあるおにぎりの米の監修を依頼した相手が、お米のブレンドに高い技術やノウハウを持っている 「八代目儀兵衛」 です。
江戸時代から続く京都の老舗米屋にルーツを持つ八代目儀兵衛 (京都市) が快走している。複数品種の米を独自の手法でブレンドして生み出す 「理想の銀シャリ」 をギフトや飲食店向けに販売し成長を続けている。
(中略)
儀兵衛の知見。それが、異なる産地やブランドの米をブレンドするノウハウだ。そのベースには、独自の米の評価方法がある。
「おいしいお米は甘い」 。儀兵衛ではツヤや白さ、香りなど7つの項目の合計点で米を評価している。項目の中でも重要なのが、甘さ、のどごし、ツヤの3指標で、他の2倍の点数を配分し、あらゆる産地、品種の米の味をデータベースに入れている。
このデータをもとに、用途や飲食店など顧客の要望に応じて複数品種を 1% 刻みでブレンドし、求める味の米を完成させる。料理のおいしさを最大限に引き出す米を提供するこのノウハウが、儀兵衛の強さだ。
同じ産地の同じ品種でも毎年の出来や季節、気温などで味が変わる。橋本 CEO は自ら年間1千回以上試食。常にデータベースを更新し、最適解を探し続けている。
儀兵衛は約40人いる全社員に、コメに関する知識やブレンド技術を認証する 「お米マイスター」 三ツ星の取得を義務付け、最高位の五ツ星を持つ社員も約10人いる。それでもベースとなるデータの登録も、完成したブレンドも、最終的な味の判断は橋本 CEO が行う。
学べること
では八代目儀兵衛の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
学べるのは、差異化によって 「自分たちならではの勝ち筋」 をつくる方法です。
良いお米の定義
消費者が 「良いお米」 と判断する基準の1つは 「お米の産地はどこか」 です。たとえば 「新潟県魚沼産コシヒカリ」 や 「山形県産つや姫」 など、産地と品種の組み合わせが米の良しあしの目安となっていました。
一方、業界でのブレンド米への認識は、ブレンド米は業務用で味を安定させたり、コストを抑えたりするための手法というものです。消費者からしても、ブレンド米であること自体には特別な価値にはなっていませんでした。
儀兵衛の逆張り戦略
ここに勝ち筋を見出したのが儀兵衛です。
儀兵衛は米の品質を支えるために精米にもこだわり、お米の品質の良さを 「どんなブレンドで構成されているか」 によって判断するという、新たな視点をもたらしました。
これは業界のトレンドとは違う方向に舵を取った逆張りです。従来の産地や品種という 「Where」 や 「What」 に重きを置く勝負ではなく、ブレンドの方法や精米という 「How」 に焦点を当てた戦略を展開したのです。
他と違うことをやる
今回の事例からの学びを一般化すると、戦略に示唆があります。
戦略で重要なのは、他と違うことをやることです。アプローチは大きく2つあり、① 他の人がやっていることを自分たちならではの方法でやるか、あるいは、② そもそも誰も手をつけていないことをやるかです。
マーケティングの視点で大事なポイントを加えると、他とのその違いが結局のところは 「お客さんの価値につながっているか」 です。差異化がお客さんへの価値を生み出してこそ、戦略は意味を持つのです。
まとめ
今回は八代目儀兵衛の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 戦略で重要なのは他と違うことをやること。差異化によって自分たちならではの勝ち筋をつくっていく
- マーケティングの観点で重要なのは、他との違いがお客さんの価値につながっていること。差異化は単に違うだけではなく、価値を生み出してこそ意味がある
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