投稿日 2023/10/24

行き先がわからないガチャ企画の 「旅くじ」 。三方よしの提供価値とは?

#マーケティング #提供価値 #三方よし

今回は、旅行の行き先が買うまでわからない 「旅くじ」 をご紹介します。

ガチャガチャの要素を取り入れた旅行サービス、魅力はどこにあるのでしょうか?

マーケティングの視点で紐解きます。

旅行の行き先がわからない 「旅くじ」 


出典: PR TIMES

格安航空会社 (LCC) の Peach (ピーチ) を運営する Peach Aviation が、「旅くじ」 に力を入れています。


旅くじはカプセル自動販売機で買えます。1回5000円で、カプセルを開けるまで旅先はわかりません。

カプセルの中に入っているのは、

  • 指定された行き先
  • Peach 航空券 (行き先限定) が購入できるピーチポイント (6,000円または10,000円分) 
  • オリジナルバッジ
  • 旅のミッション

ちなみに旅のミッションとは、たとえば札幌では 「カニを苦労してむいて、隣の人にあげてきて! (手袋で) 」 、鹿児島は 「西郷さんのコスプレで犬の散歩をしてきて!」 などです。中には旅行先とはいえ、やる難易度が高めのものが用意されています。

旅くじが狙うのは、遊び心をきっかけに旅行に行ってもらうことです。行き先をあえてわからなくすることで生まれるわくわく感から、旅行需要を掘り起こしているのです。


旅くじの提供価値


ガチャのような旅くじは、「サービス供給の調整 (最適配分) 」 と見ることができます。

サービス供給の最適配分


一般的には、旅行先によって観光客からの人気の高いところは旅行者数が多く、そうでないところは人が少ないという差がでてしまいます。

ですが、人気が必ずしも高くない場所でも、人々が知らないだけで、行けば十分に旅を楽しめるところはたくさんあります。

旅くじが仕組みとしてうまいのは、人気のないところへの送客につなげている点にあります。

お客さんは旅行先を選べず、買うまでは行き先がわからないということは、裏を返せば売り手 (ピーチ) が旅行する場所を決められるということです。旅くじは、知られざる魅力的な観光地と人々をつなげる役割を果たすわけです。

もし旅くじがなければ人気の観光場所に集中していた人の流れを、旅くじを買ってもらうことで多少なりとも日本全体の旅先を調整し、最適化しています。

三方よしを実現する旅くじ


旅くじは人気のある観光地だけでなく、隠れた名所や知る人ぞ知る場所にも旅行客を連れていくことで、観光地を活性化させます。

このような観点から見ると、旅くじはお客さんである旅行者、売り手であるピーチ、そして旅行先の地域、すべてに利益をもたらす 「三方よし」 を実現している企画です。

三方よしとは、買い手よし、売り手よし、世間よしです。

旅くじでは、買い手であるお客さんには未知の旅行体験を、売り手のピーチには新たな旅行需要からの売上、そして旅行先の地域には新しい観光客をもたらす地域経済の潤いをもたらしているのです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。