投稿日 2023/10/01

ライオン 「おくち育 噛もっと!」 。顧客接点と価値実現、存在意義の再定義

#マーケティング #顧客接点 #存在意義

お客さんの心をつかむマーケティングとは、どのようなものでしょうか?

今回は、ライオンのユニークな取り組みについて 「顧客接点」 をキーワードに紐解き、マーケティングへの学びを掘り下げます。

ライオンが子ども向け歯の育成を強化


出典: PR TIMES

消費財メーカー大手のライオンが、おもしろい取り組みをしています。グミとガムに AI 技術を組み合わせ、子どもの歯の成長を後押しする商品を出しました。

 「おくち育 噛 (か) もっと!」 を4月に EC (電子商取引) で販売を始めた。子供向け歯の育成をテーマにした 「おくち育」 会員向けのアプリと、専用のグミ、ガムの3点がセットになる。主に小学生が対象で価格は1カ月2560円。定期便なら1カ月1980円。

まずアプリ上で歯並びをカメラで撮影すると、AI により状態を評価し、「ガタガタ歯」 などといった表現で現在の状態を教えてくれる。その後、赤と青2種類のガムを重ねて同時に40回かむ。2色の混ざり具合とアプリ上に例示された写真を見比べる形でかむ力を測定する。レベル 1 ~ 5 の5段階になっており、子供にもわかりやすいよう、その強さを 「ライオンタイプ」 や 「ねこタイプ」 などと表現している。

測定を終えた後1カ月間は歯の力育成に着目した専用のグミを毎日食べ続ける。ガムは薄く平たいながら、大きめで子供のかむ力を育てるのに適した弾力性にしている。

1カ月経過したら再び同様の測定を繰り返し、観察を重ねる。同社が販売前に実施した実験によると、1カ月使用した子供のそしゃく力は1.6倍になったという。

ライオンは 「おくち育 噛もっと!」 によって、子どもたちの口腔の健康に対する意識が高まることを目指しています。

子どものお口の健康を中心に据えながら、従来の物販だけでない成長の可能性を探るとのことです。


学べること


ではライオンの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

ご紹介したライオンの専用グミ、アプリやトレーニングゲームの提供から、どんな学びが得られるでしょうか?

お客さんとの接点の重要性


ライオンの事例は顧客接点を持つ重要性を示しています。ライオンが狙っているのは、新しい商品・サービスを展開することでの 「顧客接点の拡大」 です。

これまではモノの販売のみで、今までにやっていなかったメーカーだからこそ、顧客接点の拡大にチャンスがあります。

大事なのは、単にお客さんとの接点を多く持つだけではなく、「お客さんがつながっていたいと思える体験価値」 を顧客接点で提供することです。

お客さんとの接点を持つことの重要性は他にもあります。顧客接点ができれば、それだけお客さんのことを理解する手がかりが得られることです。

顧客理解から自分たちがお客さんに提供したい価値を定義し、見出した価値を商品・サービス、価格設定やプロモーションなどの商品開発やマーケティングに反映させます。そして、1人ひとりのお客さんの文脈に沿って価値提案を行い、顧客接点で価値を実現します。

こうした好循環をまわしていくことが、ビジネスの成長を持続可能にするカギを握ります。

自社の存在意義の再定義


ライオンの事例からもう1つ掘り下げたいテーマは、「自社の存在意義の再定義」 です。

ライオンの場合に当てはめれば、これまでの 「便利なものを提供する」 から、「お客さんの生活をより良くする」 というより高い次元に立って役割を再定義しました。

具体的には、ライオンは 「おくち育 噛もっと!」 からの顧客接点の拡大と価値向上によって、子どもの口腔衛生をサポートし、より広い範囲で健康への貢献を目指すわけです。

大局観を持つ


人はえてして目の前のことばかりに目が向きがちです。よく言えば集中できていますが、別の捉え方をすれば視野が狭くなっているということです。

一歩引いて俯瞰しての大局観を持つことで、自分 (たち) の存在意義をときには問い直すことが大事なのです。


まとめ


今回は、ライオンの子ども向け歯の育成サービス 「おくち育 噛もっと!」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 顧客接点を増やし、各接点でお客さんの理解を深める手がかりを得る

  • 顧客理解からお客さんに提供したい価値を定義し、見出した価値を商品開発やマーケティングに反映させる。お客さんの文脈に沿って価値提案を行い、顧客接点で 「お客さんがつながっていたいと思える体験価値」 を提供する

  • 企業としての役割をより高い次元に立ち、一歩引いて全体を俯瞰する大局観を持つことで、自身の存在意義を問い直すことができる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。