投稿日 2023/10/18

チョコザップの快進撃の裏に、PDCA と OODA の二刀流あり

#マーケティング #PDCA #OODA

今回のキーワードは 「PDCA」 と 「OODA (ウーダ) 」 です。

PDCA サイクルと OODA ループ (詳しくは後ほどご説明します) は、一見すると同じように見えますが、似て非なるものです。2つは組み合わせることで、より効果を発揮します。

今回はコンビニジムのチョコザップを取り上げ、PDCA と OODA の2つのレンズから成功の要因を紐解きます。

チョコザップの "Try & Learn" 


出典: MarkeZine

コンビニジムの 「chocoZAP (チョコザップ) 」 は立ち上げ当初、新しく店舗を出す度にジムの店舗を使ってテストを繰り返し行ってきました。

利用データ、店舗スタッフや会員のお客さんからの声をもとに、利用者のジム内でのトレーニング行動を観察し検証を行うことで、ニーズを把握しました。そこから店舗体験やマーケティング施策の改善を続け、今のコンセプトに至っています。

リアル店舗を使ったテストマーケティングを8カ月にわたって実施し、A / B テストを通じて潜在的な声を洗い出した。それも、RIZAP の名前を伏せて、「FIT PARK24」 「FIT PLACE 24」 「ZAPAN」 といった覆面ブランドを冠したフィットネスジムを東京近郊47カ所にオープンさせる徹底ぶりだ。

それぞれに置くマシンなどの設備や台数を変え、料金なども増減させ客の反応を調べた。例えば防犯用の AI (人工知能) カメラを設置することで、映像からどのマシンがどれぐらい使われるのかを分析していった。

 (中略) 

筋トレマシンを充実させた方が好まれるとの仮説を立てていたが、それは見事に外れた。現在 chocoZAP の店舗を訪れると、トレッドミルの台数が多く設置されているのは、こうした理由による。すべてはデータによって決めているわけだ。

チョコザップは店舗内の改善だけではなく、ジム会員の入会についてもテストをしました。

入会までの契約の意思決定に至るまでの導線についても、A / B テストを実施し、何をどのようにアピールすれば心に突き刺さるかを検証した。店舗ごとの特徴についてクリエイティブやキャッチコピーを変えたチラシをトータル約500種類もつくり、駅前で手配りした。ネット広告もデザインを変えた約4000種類以上を用意して、各所に掲出した。

チラシに書かれた QR コードやネット広告枠からジャンプした先のランディングページも200種類以上をラインアップし、反応の善しあしを探った。例えば、「24時間ジム使い放題プラン月額2980円」 と料金をイチオシにしたもの、「セルフエステ、使い放題」 と付加サービスを前面に打ち出したもの、「体力年齢平均12.4歳の大幅若返り」 とシニア層を意識したものまで、様々だ。

契約に向けて最後の一押しする場であるランディングページも、同様に 「てぶらでちょいトレ!」 と利用シーンを紹介してみたり、「肥満気味…ヤバいッ!」 と危機感をあおったりと工夫した。とにかく、考え得る限りのパターンを試しつくしたところに、消費者の心をつかんだ chocoZAP 躍進の原動力がある。

リアル店舗内の A / B テストと契約導線の A / B テストを同時並行で行った結果、採り入れることになったメニューもある。現在多くの店舗に設置しているセルフエステやセルフ脱毛ができるマシンがそれだ。テスト期間中にチラシの中で女性向けのセルフエステ・セルフ脱毛を強く訴求したところ、確実に従来のフィットネスジムが取り込めなかった若い女性層を店舗に呼び込めることがデータで裏付けられたからだ。

学べること


ではチョコザップの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

チョコザップの取り組みには、PDCA サイクルの重要性が見て取れます。

chocoZAP の PDCA


PDCA とは、Plan (計画) 、Do (実行) 、Check (評価) 、Act (改善) の順で行われるマネジメント手法で、これを繰り返すことで改善と進化を図ります。

チョコザップの成功のカギは、特に Check と Act のところにあります。テストをしての振り返りと適応のステップをきちんと行うという 「トライ & ラーン (Try & Learn) 」 を続けたことで、提供サービスやマーケティングコミュニケーションをより良くし、お客さんの満足度を高めてきました。

OODA ループ


もう1つ、チョコザップのやっていることに当てはまるのが 「OODA (ウーダ) ループ」 です。

OODA ループとは、意思決定と実行のプロセスです。OODA は4つの頭文字です。

✓ OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集し観察をする
  • Orient (状況判断) : 収集した情報を解釈し、意味合いや示唆を抽出する
  • Decide (意思決定) : 状況判断にもとづいて決断をする
  • Act (行動) : 実際の行動に移す

チョコザップがテストでやったことを OODA ループの観点で見てみましょう。

新しい店舗やマシンを導入した後のお客さんの利用状況の観察や声を聞くのが Observe です。それらを深掘りし、お客さんを理解し教訓を得るのが Orient 。次の新しい店舗や施策にどう活かすかを決めるのが Decide 、そして実際に実行するのが Act となります。

OODA ループを何度もまわすことで、チョコザップは常に進化し続けてきたのです。

PDCA と OODA のかけ合わせ


PDCA サイクルと OODA ループは似て非なるものですが、実は補完関係にあります。

PDCA だけでも有効ですが、OODA ループをかけ合わせることによって、PDCA をより効果的にまわすことができます。


PDCA の Plan と Do のステップを行うとき、OODA ループを1周させます。PDCA の計策 (Plan) で OODA の観察・状況判断・意思決定 (Observe, Orient, Decide) を行い、PDCA の実行 (Do) が OODA の Act に相当します。

さらに、PDCA の後半の Check と Act でも同じく OODA をまわします。PDCA の Check で観察・状況判断・意思決定 (改善内容を決める) 、その結果をもとに PDCA と OODA の Act である改善を行うのです。

このように PDCA と OODA を組み合わせることで、より高度な改善と進化につながります。チョコザップの成功に大きく寄与している要素です。


まとめ


今回コンビニジムの 「チョコザップ」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • PDCA と OODA をかけ合わせることで、計画立案からの意思決定と実行がより効果的にできる

  • PDCA の1回をまわすときに OODA ループを2回まわす。Plan と Do で1回目の OODA (Plan で OOD (観察・状況判断・意思決定) , Do で行動) 、PDCA の Check と Act で2回目の OODA (Check で OOD, Act で A) を行う


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。