投稿日 2023/10/25

将棋界の AI 活用に学ぶ、マーケティングで AI を使いこなす方法

#マーケティング #将棋 #AI

将棋とマーケティング、一見すると関連はなさそうですが、AI というレンズを通して見ると共通点があります。

今回は、将棋界でのさまざまな AI 活用の事例から、マーケティングに学べることを掘り下げます。

マーケティングにおいて、AI をどのように有効活用すればいいのでしょうか?ぜひ一緒に探っていきましょう。

将棋界の AI 活用


藤井聡太八冠の活躍などで盛り上がる将棋界ですが、今や欠かせない存在となっているのが AI です。

出典: 日経

プロ棋士が研究に AI を利用するだけではなく、アマチュアや将棋教室で子どもも活用したり、他には将棋番組の鑑賞の盛り上げに AI が一役買っているなど、多様なシーンで AI 導入が進んでいます。

将棋の AI は IT 企業から個人まで広く開発している。HEROZ(ヒーローズ)の最新版の AI は1年半前のモデルに対して勝率8割に達するなど進化が続く。無料でダウンロードできる AI の場合、専用の将棋盤ソフトにダウンロードした AI を思考エンジンとして登録する手法が一般的で、取り込んだ棋譜や研究局面の検討ができる。

AI を使うのはプロや大人ばかりではない。7月の週末、「ねこまど」 が運営する都内の将棋教室では生徒がタブレットに向かって真剣に考え込んでいる。映し出されているのは将棋の盤面。画面に触れて駒を動かすと講師が 「王様がこっちに戻れるんじゃないかな?」 と助言する。

これはスタジオケイ (北九州市) の無料の将棋アプリ 「ぴよ将棋」 を使った授業の風景だ。講師の砂村洋輔さんは、個別指導で3年ほど前からぴよ将棋を活用している。砂村さんは 「指すのが僕だけだと飽きてきてしまうが、ぴよ将棋を取り入れると飽きがこない」 と効果を話す。指導を受けている9歳の男の子も 「勝ったり負けたりして楽しい」 と満足げだ。

具体的な将棋での AI の導入例を見てみましょう。

✓ 研究ツール
  • プロ棋士やアマチュアが将棋 AI ソフトを使い研究に活用
  • 将棋アナリティクスソフト 「HEROZ (ヒーローズ) 」 では取り込んだ棋譜から局面研究に使用されている

✓ プロ棋士の養成や教育ツール
  • AI を使用しての研究や対局経験が当たり前になり、将棋の奨励会に所属せずにプロになる棋士も表れている
  • 一般の将棋教室で AI を使用。たとえば子ども向け 「ぴよ将棋」 を使い、子どもたちはタブレットに向かって将棋を学べる

✓ 対局の配信
  • ABEMA は将棋専門番組の対局画面に AI による形勢評価を表示
  • 現時点での両者の勝率、予想される次の打ち手、その対局での形勢の推移などをリアルタイムで視聴者に伝える

✓ 将棋の普及や啓蒙
  • AI を使った対局配信により、将棋に詳しくなくても将棋のおもしろさがわかるようになった
  • 書籍で深く将棋を学ぶ人、女性の将棋ファンも増加し (新しいお客さんの獲得) 


マーケティングでの AI 活用へのヒント


ここまで見てきた将棋での AI 導入の事例は、マーケティングでの AI 活用に応用できます。

マーケターが将棋から学べることとして整理して見てみましょう。

✓ 顧客理解と戦略立案
  • ユーザー行動やサイト訪問者の動向をリアルタイムで分析し表示
  • 過去の膨大なお客さんに関するデータを蓄積し、いつでも活用できる状態に整備しておくことで、顧客理解のしやすさを実現する
  • 顧客理解からマーケティング戦略に反映させ、シミュレーションや A/B テストで AI を活用する

✓ マーケティング活動の効果をリアルタイムで分析
  • データ収集や分析を AI が24時間体制で行い、リアルタイムで状況を把握できる仕組みをつくる
  • 迅速で正確な評価により、データからの正しい現状把握、今後の見通し、成功要因や失敗原因、改善策を明確にすることができる

✓ マーケターの養成
  • AI を用いて、新入社員や初心者がマーケティングの基礎を学ぶ。AI が教育プロセスの高速化、反復を強化する
  • AI を用いることで、組織内での熟練者と初級者におけるスキルギャップを縮小する
  • 学習プログラムには、ゲームの要素 (ゲーミフィケーション) を取り入れ、学習意欲やモチベーションの維持向上につなげる


具体的な AI 活用イメージ


ある食品会社、ここでは架空の会社 「デリシャスフーズ株式会社」 を例に、具体的な AI 活用のイメージをもう少し膨らませてみましょう。

デリシャスフーズは、食品市場での持続的な競争力を保つため、将来の市場動向と自社の可能性を把握したいというケースです。

現状把握


まず、デリシャスフーズは、AI に PEST 分析のフレームから食品業界の現状と可能性を整理するように指示をしました。AI は PEST という政治、経済、社会、技術的な要因から、業界の現状を俯瞰する情報をアウトプットしました。

出力された情報の中には最新のトレンドが十分に反映されていませんでした。そこで、特に注目したい 「プラントベースの食品技術」 「人口増加に伴う食料危機」 「環境への影響」 といったトピックを追加で AI にインプットし、再度 AI にアウトプットしてもらいました。

未来シナリオの描写


現状把握をもとに、AI に未来シナリオとして3年、10年、30年先について、それぞれグッドシナリオとバッドシナリオの合計6つのパターンを作成するよう指示を出しました。

出力形式は SF 小説のように物語化し、AI に描いてもらう未来小説では具体的な人物を1人主人公にし、ストーリーに人間が感情移入ができるように工夫しました。

物語化された未来シナリオの中では、主人公としてイユキという人物を設定しました。

AI が提示した未来シナリオから1つを任意で選び、その未来でイユキが望んでいるであろうこと、ペインとなる 「不」 を AI に抽出してもらいます。イユキという1人の人物の視点で、AI はさまざまな未来での消費者ニーズや課題を出しました。

商品のコンセプト立案


デリシャスフーズのメンバーは AI との対話を通じて、示された未来において自分たちの目指す世界観を描きました。

実現したいことのコンセプトを言語化するために、コンセプト案を AI に50個出してもらいます。AI からのコンセプトアイデアの中から、魅力的な表現のものに人が判断し絞り込んでいきました。

選ばれたアイデアを再び AI との対話を通じてブラッシュアップします。あらためて未来シナリオとの整合性を確認し、コンセプトが実現したい世界観にフィットするかを AI と対話し磨き上げます。

デリシャスフーズは、持続可能な食材 (これも AI からの提示により人が選定した) を用いた新しいコンセプトを確立。それをもとに新商品の開発に取り組むこととなりました。

人と AI の協業を通じて未来の市場動向を予想し、新たなビジネスチャンスを見つけ出すことができたのです。


まとめ


今回は AI の活用について、将棋界の AI 導入事例をヒントにマーケティングでの応用を見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 将棋界では AI が研究、教育、番組配信の各面で活用され欠かせない存在になっている

  • AI はマーケティングにおいても、市場や顧客理解、戦略・コンセプト立案、データ分析、教育ツールとしてなど幅広く活用できる

  • 人と AI のそれぞれの役割や強みを活かし協業することで、ビジネスチャンスを見つけ成長につなげられる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。