投稿日 2024/07/06

三越日本橋本店のシニア向け健康サービス。利用きっかけを増やし、滞在時間と顧客単価の向上、顧客理解の深化

#マーケティング #利用機会 #顧客理解

ネットでの買いものが手軽にますます便利になり、お店への足が遠のく現代ーー。

では、どうすれば来店の新たなきっかけや動機をつくることができるのでしょうか?そして来店だけではなく、滞在時間の増加、顧客単価の向上までを目指すことは可能なのでしょうか?

今回は、百貨店の三越日本橋本店が打ち出したサービス事例から、これらの問いへのヒントを紐解きます。

三越日本橋本店のシニア向けの健康サービス



東京にある三越日本橋本店がシニア向けの健康サービスに力を入れています。

三越日本橋本店は店舗の客数を伸ばすため、衣食住以外の新たな領域として健康に焦点をあてたフロアを新館5階に設けました。2024年1月に、新館5階に 「アローズラボ & アローズジム」 をオープンさせました。

特徴は、体力年齢を測ることができる検査メニュー 「体力ドック」 を、三越日本橋本店の客層にあわせて独自に開発したことです。年齢の加齢で低下しやすい筋肉量などの身体組成、筋力、持久力、視力の4項目を専用マシンで検査し、基礎体力が何歳に相当するのかを評価します。


他には、2023年4月に 「歯科・健脳クリニック日本橋」 を開業しました。

アルツハイマー型認知症を早期発見するための検査などを自費診療で受けられます。このクリニックには歯科や脳神経内科など合わせて月に百数十人の患者が訪れ、約3割が三越日本橋本店の外商客とのことです (参考記事) 。

クリニックで人気のサービスは、特に認知症の早期発見につながる歯周病や脳などの全検査項目を受けられる約70万円のメニューです。60代を中心に受診がみられ、中国など外国の富裕層が定期的に訪日して受診しに来るケースもあるそうです。


利用シーンをつくる意味合い


三越日本橋本店のシニア向けの健康サービスについて、マーケティングの観点で注目したいのは次の3つです。

  • 来店へのきっかけ (エントリーポイント) の増加
  • 店内の滞在時間や顧客単価の向上
  • 顧客理解の促進

では順番に見ていきましょう。

来店へのきっかけ (エントリーポイント) の増加


スポーツジムやクリニックでの健康に関する測定メニューができることによって、健康や体力維持のためにお店に行くというきっかけをつくることができます。

マーケティングの用語で表現すれば、来店への 「エントリーポイント」 を増やせるということです。

たとえば、今まではお中元やお歳暮といった半年に1回の来店だった状況から、クリニックやジムに定期的に通いに来てもらうことで来店頻度の増加、さらには買い回りにつながります。

ジムだけでは足を運ぶのが億劫に思えても、三越での買い物のついでにジムやクリニックを使うという利用シチュエーションも作ることができる。

店内の滞在時間や顧客単価の向上


三越がシニア向けの健康サービスを展開することの狙いは、滞在時間と顧客単価を上げることです。

体力検査や運動のためにジムやクリニックを利用してもらうことで、百貨店内の滞在時間が長くなります。ジムに来てせっかく百貨店に訪れたのだから、買い物もしたいと思え、さらには食事もしていくという全てを店内で済ませることもあるでしょう。

さらに滞在する時間だけではなく、買い物や食事は支出を伴うので、その分だけ1回来店あたりの顧客単価も向上します。

来店してくれたお客さんにとって価値ある時間を提供することで、他の百貨店にはない商品購入以上の買い物体験を生み出し、結果として販売機会を拡大するわけです。

顧客理解の促進


ここまでは、利用頻度、滞在時間、購入単価と、直接的なビジネスへの売上への恩恵でしたが、もう1つ見逃せないのが顧客理解の促進につながることです。

健康サービスを使ってもらうことで、体力測定情報などから、お客さんの健康や食事、生活スタイルについて1人ひとりを理解することができます。

これまではお客さんの情報は買い物についてが中心でしたが、健康状態や生活習慣などのお客さんの理解範囲が広くなります。

多角的な顧客理解によって、おすすめの商品や食事などの提案につなげられたり、新しい商品やサービスの開発にも活かせるでしょう。

お客さんの期待を超える体験を提供できれば、百貨店としての全体の魅力を高め、顧客ロイヤルティの向上が期待できます。


まとめ


今回は、三越日本橋本店がシニア向けの健康サービスを取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめて、新しい店舗体験や利用シーンをつくることでの恩恵や波及効果です。

  • 来店へのきっかけの増加: スポーツジムやクリニックの健康メニューが、お客さんに新たな来店理由になり、定期的な来店を促進する

  • 滞在時間と顧客単価の向上: ジムやクリニック利用で百貨店内の滞在時間が増え、買い物や食事も一緒に済ませるなどに顧客単価の向上が期待できる

  • 顧客理解の深化: 健康サービスを通じて得られるデータ・情報からお客さんのライフスタイルや健康状態を理解でき、お客さん1人ひとりに合った提案や新商品開発に活かせる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。