ビジネスを成長させるためには、新しいお客さんを増やすことが必要不可欠です。では、新規顧客の獲得のためには、どうすればいいのでしょうか?
有効なのは、思い出してもらうきっかけとして多様な 「入口」 を提供することにあります。
そこで今回は、イケアの事例を通じて、実際にどのように実践すれば良いかの秘訣を紐解きます。
イケア
イケアはスウェーデン発祥の家具・雑貨チェーンです。
イケア・ジャパンでは3つの都心型店舗の展開や、国内10店舗目の大型店舗 「IKEA 前橋」 をオープンするなど、実店舗の展開に注力しています。
イケア・ジャパンのデザイン部門の国内責任者 (谷川舞氏) と、フード部門の国内責任者 (菊池武嗣氏) が、次のように話していました。
谷川: イケアでは、「IKEA as a destination store (目的地としてのイケア) 」 「fun day out (家の外で過ごす楽しい日) 」 という言葉を非常に大切にしています。これらの言葉は、一日出掛けても楽しい店舗体験作りに注力していることを意味しています。現在は、EC サイトでの買い物が当たり前になりました。これは同時に、以前なら当たり前だった店舗に行くことだけがお客様の選択肢ではなくなったことも意味しています。
だからこそイケアでは、店舗に来る対価として、ショールームやスウェーデンにちなんだ料理など、店舗だからこその付加価値をお客様に体感していただけるように意識しています。
菊池: 都心型店舗においてフードも重要な役割を占めています。立地の良さと価格の安さも相まって、多くのお客様が友人や同僚と食事目的でイケアに来てくださっています。そして、そのついでに他の商品を見てくださる方も多いです。
このように、フード事業がこれまでつながりの持てなかった層のお客様に興味を持っていただくための一つのきっかけになっています。
学べること
ではイケアの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
新しいお客さんをいかに獲得するかに示唆が得られます。
新規顧客を獲得するために大切なこと
新しいお客さんを獲得するため重要なのは、お客さんの生活やビジネスの中でどれだけ利用されるきっかけをつくれるか、そして意味あるものにできるかです。
利用するシチュエーションを多く持ち、そのシチュエーションになったときにお客さんの頭の中の選択肢の1つとして候補に上がること、そして選択肢の中から他ではなく自分たちが選ばれることが大事になります。
イケアが選ばれるきっかけ
イケアに当てはめてみましょう。
イケアでは、「目的地としてのイケア」 と 「家の外で過ごす楽しい日」 というコンセプトを打ち出しています。家具を売るお店であるだけではなく、お客さんのさまざまなニーズやシチュエーションに応える場所であることを目指しています。
行き先としてイケアが選ばれるには、休日や平日でも、「おでかけをして楽しくすごしたい」 という気分になった顧客文脈で、イケアのことを目的地として選んでもらえるかが肝になります。
目的地になる理由には、イケアの家具やグッズ、生活用品を見たり買うだけではなく、スウェーデンの料理を食べたいという食事の観点もあります。家具単体よりも食べにいくきっかけも加わる分だけ、イケアのことを思い出してもらいやすく、そしてイケアが目的地に選ばれやすくなるわけです。
たくさんの 「入口」 の用意
マーケティングへの汎用的な学びにすると、お客さんが何かをしたいと思ったシチュエーションにおいて、思い出してもらえたり、自分たちが選ばれる 「きっかけ」 (入口) をたくさん用意しておくことの重要性です。
こうしたきっかけはマーケティングでは 「カテゴリーエントリーポイント」 と言います。エントリーポイントという入口がたくさんあるほど、色々な人が来たり使う機会をもたらし、ひいては新しいお客さんを獲得することにつながります。
イケアは家具やインテリアグッズを見たり買うという入口だけではなく、手頃な価格で食べられるスウェーデン料理という入口としても、お客さんにドアを開けています。
複数の提供価値からの相乗効果
イケアの事例から学ぶべきポイントは、単に多くの入口を持っているだけではなく、それらがどのように相互に作用し、ビジネス全体に貢献するかを理解し、意図的にデザインすることです。
お客さんがある特定の理由で自社の商品やサービスに関わることを選んだときに、他の商品・サービスにも触れることで顧客接点が増え、より深い関係性をつくる機会が生まれます。
イケアの例で言えば、家具などの商品と食事の2つがあることでのかけ算での効果です。
家具や生活用品を見に来た人が、ついでにイケアのスウェーデン料理などの食事も楽しみ1日を過ごせる、または、スウェーデンの料理を楽しみに来た人が、何気なしにイケアの家具などの商品売場にも足を運び、せっかく来たので買っていく、あるいは次に買うときの下見になるという具合です。
利用するきっかけ (入口) が多くあることで新しいお客さんを呼び込み、お店の利用頻度や滞在時間が増えるという、複数の顧客価値からの相乗効果が生まれることが期待できます。
まとめ
今回はイケアの事例から、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ビジネスを成長させるためには、既存のお客さんのロイヤルティ (商品やサービスへの親近感や愛着) を高めるだけではなく、新規のお客さんを増やすことが必要になる
- 新規顧客を獲得するために、多様な利用のきっかけをつくることが重要。お客さんのシチュエーションや求めるニーズに応じて、思い出したり利用のきっかけとなる様々な 「入口 (カテゴリーエントリーポイント) 」 を用意する
- イケアは家具や雑貨の販売だけでなく、スウェーデン料理といった食事も提供している。これらの入口が相互作用し、イケア全体の体験価値を高める
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。
ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!