投稿日 2024/07/28

なぜマーケティングは難しく感じ、とっつきにくいのか?

#マーケティング #人生 #自己実現

なぜ少なくない人にとって、マーケティングが難しいと感じたり、自分には関係のないことだと思われるのでしょうか?

もしマーケティングへの理解の壁を乗り越えることができれば、マーケティングの知識や行動、その具体的な方法は、あなたのお仕事、日常生活や人間関係を豊かにし、あらゆる場面で役立つツールとなります。

今回は、マーケティングが難しいと感じてしまう要因を掘り下げ、ではどうすればマーケティングをもっと “身近なもの” に変えられるかを考察します。

あなたの日常や仕事にマーケティングを活かすための一歩を踏み出していきましょう。

なぜマーケティングはわかりにくいのか?


ビジネスの世界で重要な役割を担うマーケティングですが、多くのビジネスパーソン (大人) には、マーケティングの概念や具体的な方法について十分に理解されているとは言い難い状況です。

マーケティングがなぜ難しいと感じられるのか、その原因は多岐にわたります。

マーケティングの定義が難解

まず、マーケティングの定義自体が難解であることが理由の1つです。

たとえば、「公益社団法人 日本マーケティング協会」 のマーケティングの定義は次の通りです。

    マーケティングとは) 顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

    注1) 主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
    注2) 関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
    注3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。


他の定義もご紹介すると、アメリカマーケティング協会のマーケティングの定義は、

    Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.

    マーケティングとは、顧客、依頼者、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。


マーケティングの大家であるフィリップ・コトラーは、マーケティングをこのように定義しました。

    Marketing is societal and managerial process by which individuals and organizations obtain what they need and want through creating and exchanging value with others.

    マーケティングは、個人や組織が他者との価値の創出と交換を通じて、個人や組織が必要とするものや求めるものを満たす社会活動のプロセスである。


このように、さまざまな団体や専門家によってマーケティングの定義が提供されていますが、言わんとしていることが難しく、これがマーケティングへの理解を複雑にしています。

マーケティングは単に商品やサービスを売る活動という狭い意味だけでなく、顧客ニーズを理解し、それに応じて価値を提供し、継続的な関係を築く広範な活動を含むため、その全体像を把握するのは容易ではありません。

専門用語が略語やカタカナばかり

次に、マーケティングに関連する用語にはアルファベットの略語やカタカナ語が多用されています。

たとえば略語は、3C (Customers, Company, Competitors) 、4P (Product, Price, Place, Promotion) 、STP (Segmentation, Targeting, Positioning) 、そして SWOT (Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats) などです。

他には、KGI, KPI, SEO, UI/UX, PMF, MVP, LTV, CRM, MA, PV, UU, MAU, CAC, CPA, CTR, CPC, CTA, ROI, ROAS などと、挙げればきりがないほどです。

カタカナ用語も多く存在します。マーケティング自体がカタカナであり、マーケティング用語でカタカナのものは、代表的なものだけでも、ブランディング、セグメント、ターゲット、ニーズ、インサイト、ペルソナ、ベネフィット、ロイヤルティ、メディアなどです。

これらの用語はマーケティングを学ぶ上で必須となる基本的な概念ですが、略語や専門用語が多いため、初級者にとっては意味を確認したり覚えるのが大変で、マーケティングへの理解が進みにくい要因です。

実生活との関連の薄さ

また、実生活とマーケティングの具体的なつながりが見えにくいという点も、理解の障壁となっています。

日常生活で直感的にイメージしやすい職業、例えばお花屋さんや野球選手、アイドルなどは子どももイメージしやすい存在です。

一方のマーケターやマーケティングの活動は目に見えにくく、その影響を直接的に感じることが少ないです。マーケターと近い職種である販売や営業のような直接的な業務は理解しやすいものの、マーケティングがやっていることの全体像や影響を捉えることは難しいでしょう。

しかし実は、マーケティングは私たちの生活の身近なところにたくさん隠れてたりします。

たとえば、スーパーで特売をやっているのは、お客さんの購買意欲 (買いたいという気持ち) を高めるためのマーケティングが取り入れられているはずです。他には、好きなアーティストの新しい曲が出たとき、SNS で話題になっているのも、音楽レーベルのマーケティング活動の結果かもしれません。

初級レベルのマーケティング書籍のハードルが高い

マーケティングのことを理解しにくい要因はまだあります。

マーケティングに関する書籍は多岐にわたり、初級レベルを謳うものも多くありますが、いずれも初級者にとって高いハードルとなっている印象を私は受けます。

というのも、多くの入門書がいきなり高度な内容から始まることがあり、具体的にはフレームワークや分析ツール、専門用語が多用されます。学ぶ側の読み手にとってはとっつきにくく感じ、読むのが次第に退屈になっていき、ともすると修行のように苦痛を感じる場合があるでしょう。

以上のここまで見てきた要因が組み合わさることで、マーケティングの理解は難しく、知ろうとすると一層複雑になるように感じ、多くのビジネスパーソンがその本質を理解することに至らず、マーケティングへの敷居の高いイメージが残ったままというのが現状ではないでしょうか。

マーケティングを多くの人の身近なものにするために


この問題、すなわち、マーケティングを理解するハードルの高さを解決するためには、どうすればいいのでしょうか?

初級者にもわかりやすいマーケティングのコンテンツ (例: 書籍や動画など) を用意するとともに、そもそもの人々におけるマーケティングへの興味を生み出し、マーケティングのことを自分ごと化してもらうことが大事だと考えます。

自分ごと化のためには、なぜマーケティングが重要なのかを知ってもらうことです。マーケティング組織に所属したりマーケティングを仕事で担当する人以外にも、マーケティングのことを学ぶ意味合いについて、納得感のある腹落ちをしてもらうことです。そして、今すぐ学びたいと思う必要性を生み出すことがポイントです。

なぜマーケティングを学ぶ必要があるのか?

マーケティングと聞くと、ビジネスや商売のこと、遠い世界のことだと考えるかもしれません。しかし、決してそうではないのです。

マーケティングの考え方や行動、方法は、あなたの日常生活や仕事で、そして人間関係を豊かにし、さまざまな場面で役立つはずなんです。

子どもの世界での "マーケティング" 

たとえば、子どもの頃に学校や公園で友だちと遊んだとき、どうやってみんなで楽しい時間を過ごせるかを考えたのではありませんでしたか?

友だちと一緒にすごしたり、仲よくするための方法を考えるということは、どんなことなのでしょうか。

相手の状況や気持ちを想像してみて、相手はどんなことを求めているのか、好きなこと・嫌いなこと、困っていることを知ろうとすることのはずです。友だちの立場になって考えてみたり、相手の視点になろうとするのではないでしょうか。

そして相手のことだけではなく、自分自身のことについても、好きなこと、できること、相手から求められているも考えたりもするでしょう。

こうした友だちの立場になって考えてみたり、相手の視点になろうとし、そして自分自身のことも好きなことやできることを理解していることで、自分は何をしたり言うことが相手にとってうれしいものにできるかが見えてくるはずです。

自己理解と他者理解

このように、自分自身への理解と、お友だちや親、先生などの他人を理解することによって、友だちと仲よくできたり、お母さんやお父さんとの関係にも影響していきます。

自分自身がどんな性格で、どのような考え方をするか、大事にしていること、自分の特徴や長所・短所を持っているのかを知っていれば、それをうまく活かす方法を考えることができるようになります。

そして、他の人が何を大切にしているのか、どのような状況にあるか、何か困っていることがあるか、どういうことを望んでいるかを理解することで、自分が少しでも相手の役に立つことをやったり、相手にわかってもらえる言い方もできます。そうなれば、相手とより良い人間関係を築くことが可能なのです。

相手のことを知り、自分のことも知って、自分が今できることをやって喜んでもらう。これは商品をつくって、お客さんのことを理解し、お客さんに伝えて買ってもらうビジネスの世界と全く同じことなのです。

マーケティングは日常生活や人生をより良くするもの

マーケティングは、特別な人だけが知っていたりやることではないんです。

自分とは関係のないことではなく、売り手と買い手の商売上だけの関係に限らず、マーケティングは1人ひとりの日常生活、もっと言うと、あなたの人生をより良くするためにとても役に立つものです。

だから、大人だけでなく子どもたちにも、このすばらしいマーケティングを今から身につけてほしいと思っています。

なぜなら、これからの時代を生き抜くためには、自分自身のこと、家族や友人・知人などの他人のこと、自分がつくれる価値 (相手に喜んでもらえること) 、これらを理解すれば、あなたのまわりの大切な人、他の人と協力しながら共により良く生きていくことにつながるからです。

まとめ


今回はマーケティングの意味合いや意義をあらためて考えてみました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ なぜマーケティングはわかりにくいのか?
  • マーケティングの定義が難解
  • 専門用語が略語やカタカナばかり
  • 実生活との関連の薄さ
  • 初級レベルのマーケティング書籍のハードルが高い

✓ マーケティングを多くの人にとって身近なものにするために
  • 初級者にもわかりやすいマーケティングのコンテンツ (例: 書籍や動画など) を用意するとともに、今すぐ学びたいと思う必要性を生み出せるかがポイント
  • マーケティングの考え方や行動、方法は、あなたの日常生活や人間関係を豊かにし、さまざまな場面で役立つ
  • マーケティングは大人から子どもまで生活や人生をより良くするもの


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。