投稿日 2024/07/14

飲食店検索サービス 「dokoiko」 の逆転の発想がおもしろい。売り手の視点から買い手視点への転換

#マーケティング #顧客目線 #逆転の発想

ビジネスでは 「売り手視点」 と 「買い手視点」 の間にある認識の違いに気づき、ギャップを埋めることで、お客さんへの価値提供につながります。

今回は、ユニークな飲食店検索サービスの事例から、お客さんの立場に立つことの重要性と難しさ、その解決方法を紐解きます。

逆転の発想の飲食店検索サービス 「dokoiko」 


出典: PR TIMES

筑波大学発ベンチャーで飲食店検索システムを手掛ける Palames (パラメス) が、食事メニューの画像から飲食店を検索できる仕組みを開発しました。

飲食店検索サービスの名前は 「dokoiko (どこいこ) 」 です。ユニークなのは、メニュー画像から店を調べる 「逆引き検索」 ができる点にあります。「食べログ」 などの一般的な検索サービスでは、まずお店を探した後にメニューを確認しますが、dokoiko は従来の手法とは逆の流れで検索をします。

使い方は、気になる料理写真のメニューをタップすると価格が表示されます。さらにタップすると、そのお店の場所や営業時間、他のメニューなど詳細情報がわかります。

これまでの飲食店検索サービスでは、料理メニューの情報より先にお店の名前や外観などが表示されます。お店の名前をすでに知っていたり、料理のジャンルに詳しい人には使いやすいかもしれませんが、こうした知識を十分に持っていなかったり不慣れな人には、実は必ずしも使いにやすいとは言えない体験設計になっていたわけです。


マーケティングへの学び


パラメスが開発した飲食店検索システムの 「dokoiko」 から学べるのは、「売り手視点」 から 「買い手視点」 になることの難しさと重要性です。

お店起点 vs 料理起点


飲食店を探すためのサービスやツールは、検索で探し出す起点になるのは 「どの店か」 でした。お店をまずは選び、その後に料理のメニューの詳細情報を見るという順番です。

それに対して dokoiko は、メニューの画像から飲食店を検索できる新しいシステムです。一般化して表現をすれば、従来型は 「誰から買うか (どのお店からという売り手) 」 、dokoiko は 「何を買うか (何を食べたいかという "買うもの") 」 を起点にしています。

自然な選択の流れ


もちろん 「このお店で食べたいという選び方をしたい」 というケースは一定数存在するので、従来の検索方式が全く機能していないわけではありません。

しかし、中には食べる料理からお店を決めたいというニーズもあるはずです。

お店の提示は後まわしにして、まずは食べたい料理を画像メニューから好きなものを選ぶというアプローチは自然な流れです。選んでいく選択の分岐プロセスのはじめのほうで、メニューの写真画像から入るというのは理にかなっています。

売り手視点から買い手視点へ


飲食店検索サービス dokoiko からの学びを汎用化すると、お客さんとの接点やコミュニケーションにおいて、「売り手視点」 から 「買い手視点」 になることの難しさと大事さです。

難しさとは、売り手が顧客目線になれていないことは、そうだと指摘されて初めて気づいたりします。

今回の飲食店検索サービスに当てはめても、dokoiko のようなメニューの画像から飲食店を検索できる仕組みは、既存サービスではお店の名前から検索することが当たり前になっていたからこそ、選んでいく手順を反対にする逆転の発想がユニークに思えるわけです。

買い手視点になるために


売り手視点を買い手視点に切り替えることは簡単ではないということは、顧客目線になることの重要性を示しています。

お客さんの頭の中や、実際の選ばれるプロセスにおいて、自分たちの商品やサービス、お店はどのような流れ (カスタマージャーニー) で選ばれているかを理解することが大事です。

お客さんの判断基準と選定方法に沿ったユーザー体験ができるように設計しておく重要性を学べる事例です。


まとめ


今回は飲食店検索システムの 「dokoiko」 から、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ビジネスでは 「売り手視点」 から 「買い手視点」 への視点の転換に難しさがあるが、お客さんの立場になることは、顧客接点でコミュニケーションを深める上で不可欠

  • 顧客目線に立つためには、自分たちの商品やサービスがお客さんにどのように選ばれているか (カスタマージャーニー) を把握するといい

  • お客さんの言動だけではなく、お客さんの判断基準 (求めるニーズや価値観などの心理) と、選定方法までを深く理解することが大事


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。