#マーケティング #顧客理解 #素人目線
データは 「結果」 を示しても、「文脈」 や 「理由」 までは語りません。
マーケティングの成果の 8 割を握るのは、泥臭いような 「人間理解」 です。
今回は、AI がますます進化し普及していく時代だからこそ、人間が担うべき顧客理解とは何かを考えます。
なぜ、同じ施策でも成果に差が出るのか?
同じフレームワークを使い、同じ施策を打っているはずなのに、なぜか成果が出る企業と、そうではない企業があります。
予算の差でしょうか。組織力の差でしょうか。それとも担当者の経験値の差でしょうか。
もちろん、それらも要因ではあります。でも私が強く感じるのは、もっと別のポイントです。
それは、どれだけ深く 「お客さんのことを理解しているか」 という一点に尽きます。
顧客理解が 8 割
マーケティングを 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動」 と定義するなら、まず知るべきはお客さんの気持ちそのものです。
AI が進化していくこれからも、マーケティングの成果の差を決定づけるのは、結局のところ 「人間理解の解像度」 なのだと私は思います。
顧客理解の重要性は、今さら声を大にして言う必要がないかもしれません。
それでも、あえてここで 「顧客理解はマーケティング全体の 8 割」 と言いたいのは、単なる比喩ではありません。本当にそれだけ成果への寄与度が大きいからです。
数字は事実を示すが、理由は教えてくれない
現在のマーケティングは、データで意思決定できる場面が増えました。
クリック率、コンバージョン率、滞在時間。様々な数字が、リアルタイムで見えるようになっています。しかし、数字は 「何が起きたか」 は語っても、「なぜ起きたか」 までは語りません。
そのお客さんは、なぜこの言葉に反応するのか。なぜこのタイミングで買うのか。なぜこのシーンで必要になるのか。
この 「なぜ」 の部分を解きほぐすのが、相手をひとりの人間として捉える顧客理解です。もしここが浅いと、どれだけデータを眺めても、洞察したと思ったことでも表面的なものになってしまいます。
顧客目線であり続けるために
では、データだけでは見えてこない 「顧客のリアル」 にどう近づけばいいのでしょうか。私が大切にしている視点やスタンスについてお話しします。
顧客は論理ではなく 「感情」 で動く
重要なのは、人は必ずしもいつも合理的ではないということです。
人は、気分や不安、心の奥底の願望の影響を受けています。論理的に正しい選択をするとは限らず、感情が先に動き、後から理屈をつけることも普通にあることでしょう。
だからこそ、顧客理解とはデータ分析にとどまらず、感情の構造を解像度高く捉えることです。
マーケティングにおいて、顧客心理への理解が浅いと、顧客像の把握が的外れになります。逆にここが深くなるほど、人間理解は深まり洞察が得られます。マーケティング施策も的確になり、打ち手の再現性が高まります。
一次情報を取りにいくことの価値
どれだけデータがあっても、顧客の行動を直接目で見ることに勝るものはありません。
実際の利用シーンでのお客さんのつまずき。顧客インタビューでの言葉にならない微妙なニュアンス。無意識の行動や表情。プロダクトを操作しようとする最初の一瞬の反応。
例えば、EC サイトで商品ページを見ているユーザーが、どこで迷い、どこで不安になり、どこで納得するのか。操作している様子を画面で共有してもらいながら、「こういうときは、どうしますか?」 と聞いてみると、売り手や作り手が想像もしなかった発見があるはずです。
これらは数字には残らない、しかしマーケティングでは重要な顧客情報です。
こうした 「肌感覚の一次情報」 を集めて意味づける力は、マーケターとしての実力を左右します。
「顧客目線」 から離れない
現場メンバーから課長、さらには部長などと事業をより広く見渡す立場になればなるほど、顧客目線が失われやすくなります。
管理職や経営層になると、どうしても数字や戦略、組織のことに意識が向きます。しかし、優れた経営者やマーケターほど、むしろ誰よりも 「お客さんの側」 に立ち続けるものです。
なぜなら、事業の方向性を誤るのは、たいていの場合、お客さんのリアリティから離れた状況に陥っているからです。
自社視点だけでの最適化、業界や社内の常識、過去の成功体験。これらが意思決定を曇らせ、いつの間にか 「お客さんの見ている世界」 とズレていきます。
だからこそ、プロフェッショナルなマーケターほど 「お客さんの目線」 で世界を見直し続けようとします。自分自身が会社の中で最もお客さんの立場になっていると言える状態を、意図的に保つのです。
難しく、重要な 「プロの素人目線」
私がマーケティングで大切だと感じているのが、専門家でありながら、素人としても見ることができるという視点です。
毎日自社の商品・サービスを見続けていると、どうしても 「わかっている前提」 で考えてしまうことがあります。例えば、最初は聞き慣れなかった難しい業界用語も自然に使うようになり、自社の論理が前提になっていきます。
専門用語は売り手は意味を知っているから普通に使いますが、一般の消費者にとっては 「?」 と思う言葉だらけです。入社前や今の部署に就く前の自分も知らなかったはずなのに、仕事に慣れると、そういった用語を当たり前のように使うようになってしまいます。
しかしお客さんは、そうではありません。初めて見る、感情や直観で数秒で判断する、文脈も背景も知らない世界に生きています。
だからこそ、意識的に 「素人の自分」 に戻り、初見でもわかるか、伝わりやすいか、直感的に魅力が伝わるか、専門知識がなくても理解できるか、と問い続ける必要があります。
これは簡単なようでいて、経験のある人ほど難しいでしょう。しかし、「プロの素人目線」 を持ち続ける人ほど、顧客理解や価値提案を正しく導きます。
AI が発達しても、人が磨くべき本質は変わらない
AI がマーケティングの施策 (How) を肩代わりし、効率化が進むほど、人が向き合うべき仕事は 「顧客の内側を解像度高く理解すること」 へシフトします。
お客さんはどんな状況にあるのか、その状況下で何を期待しているのか。どんな体験をしたいのか、どのような気分になりたいのか。どんな不満や不安を持っているのか。なぜその選択をするのか――。
こうした 「人間理解への解像度」 が高いほど、AI を使った施策でも差が生まれます。AI はツールであり、使いこなすのは人間です。そして使いこなす力の源泉は、結局のところは顧客理解の深さにあります。
逆に言えば、AI が普及すればするほど、人間理解の解像度が最大の成果を左右する要因になっていくはずです。
まとめ
今回は、マーケティングにおける顧客理解の重要性と、それを深めるための具体的な視点についてあらためて考えてみました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 顧客理解はマーケティングの 8 割を決める。成果を分けるのは、お客さんをどれだけ深く理解しているか
- 数字では拾えない 「つまずき」 「うれしい瞬間」 「感情」 を一次情報で捉える。データは 「何が起きたか」 を示すが、「なぜ起きたか」 を捉えるのは人間の観察力と洞察力
- プロフェッショナルほど顧客目線を離さず、事業やマーケティングの方向性を顧客から逆算する。離れがちな顧客目線を、意図的に保ち続けることが大事
- そのためには、常に 「初心者としての自分」 を意図的に呼び戻す。「プロの素人目線」 から、「初見でもわかるか?」 を問い続ける
- AI が施策の実行を担うほど、人間は 「顧客の内側を理解すること」 に集中し、人間理解の解像度の高さを追求するといい
どれも当たり前のようでいて、実践し続けるのは簡単ではありません。でも、これら 5 つを意識するだけで、マーケティングの成果は変わってくるはずです。