#問題設定 #問題解決

仕事やプロジェクトで行き詰まったとき、あなたならどこから手をつけますか?

今回のテーマは 「問題解決」 です。相手の期待を超えるための問題設定と問題解決の方法を考えます。

2 つの問題設定

問題解決のポイントは、問題を解く前の段階にあります。つまり、いかに 「本質的な問題設定ができるか」 です。

問題設定には 2 つのタイプがあり、ここでは 「問題明確型」 と「理想提示型」 と呼ぶことにします。

問題明確型

  • 見れば問題だとわかり、皆がそれを問題だと認識している
  • 解決しなければいけない状況が明確

理想提示型

  • 一見すると問題だと気づかないが、見えている人にはわかる問題
  • 理想と比べて初めて現状が問題だと気づく

2 つのタイプを身近な例に当てはめてみましょう。

 「問題明確型」 は部屋が散らかっていて足の踏み場もない状態です。これは問題だとひと目でわかります。

一方の 「理想提示型」 は、ゴミは落ちていないので一見するときれいですが、物の場所がバラバラで必要な時にすぐ見つからないという状態です。

理想を 「物が必要な時にすぐ見つかる部屋 (探す無駄な時間が発生しない) 」 とすれば、パッと見できれいだとしても、物が整理整頓されていなければ問題があると捉えます。

相手の期待を超える問題解決

仕事でプロとして成果を出すには、相手の期待を超え続けることです。

2 つの問題のタイプのうち、「問題明確型」 のみで相手の期待を常に超えるというのは難しいでしょう。すでに顕在化した問題を解くだけだからで、期待を超えるには 「理想提示型」 の問題解決ができるかどうかが大事になります。

そこでここからは、理想提示型に焦点を当てて詳しく見ていきましょう。

理想提示型が失敗する典型パターン

理想提示型の難しさは、現状で困っていない人には 「このままでいい」 と感じられる点です。

その人にも問題だと認識してもらうためには、理想の魅力を伝えたり、このまま放置することでのマイナス面を具体的に示すことが必要になります。例えば、探し物で時間を浪費する, 家族が物の場所を把握できないというふうにです。

問題設定の 「理想提示型」 は、問題を定義し、解決できればインパクトも大きいですが、問題設定や問題解決において陥りやすい失敗パターンがあります。

  • 理想とする内容が抽象的すぎて各人の解釈がバラバラになるケース。「もっと良いチームに」 では異なるイメージを持ち、問題設定も曖昧になる
  • 上位者からの理想の押し付けで他のメンバーから反発が起きるパターン。一方的に理想を示すと 「現場を知らない」 と受け止められてしまう
  • 理想は合意したものの、運用設計が不十分で形骸化する場合もある。問題解決のプロセスや解決後で、定着する仕組みや評価制度への組み込みを怠ると、いずれは元に戻る
  • 問題解決の施策が増えて現場の負荷だけ増えると失敗する。ただの追加業務に見えるとメンバーは疲弊し、取り組み自体が敬遠される

失敗を避けるには、理想の具体化、対話による納得感、運用の仕組み化、既存業務との統合設計が重要です。

理想提示型のプロセス

では、失敗のパターンを踏まえ、理想提示型の問題解決プロセスについて見ていきましょう。次の 5 つです。

  1. 現状把握
  2. 理想描写
  3. 問題特定
  4. 課題設定
  5. 問題解決

ビジネスでの具体例を考え、5 つのステップを当てはめてみましょう。

[ステップ 1] 現状把握

ある会社の営業チームでは、営業担当者によって顧客案件の運用がスムーズに行く時とそうでない場合がありました。

ただしこの違いは顧客の不満につながらず、営業メンバーはお互いに他のメンバーがどのように運用しているかは細かくは把握していなかったため、問題としては表面化していませんでした。

ある時に新任メンバーが営業チームに入り、新しいメンバーの素朴な質問から案件運用をどのように回しているのかを問われ、営業担当者たちが答えたところ、実は運用方法にマニュアルはなく、各自が好きなように自己流でやっていることがわかりました。

さらに掘り下げていくと、お互いの良いやり方を取り入れれば、もっと運用が改善しそうだと思えました。

[ステップ 2] 理想描写

そこで営業チームは、時間をとって営業メンバーの全員が集まる会議を開催しました。

各営業メンバーがそれぞれの顧客案件の状況や運用方法を発表し、その後に目指す理想の案件運用について議論する機会をつくりました。

認識をすり合わせ、描いた理想を 「案件の業務オペレーションが確立し、誰でも同じようにまわせる営業チーム」 としました。

この理想と現状を見比べると、案件の進め方は理想とは程遠いことに気づきました。理想を描いて、初めて現状には問題があるとわかった瞬間です。

ここで重要なのが、理想に対する納得感をいかにつくるかです。この事例では営業会議でメンバーの全員が対話し、共通の理想をすり合わせました。もし営業部長などからの一方的な押し付けなら 「やりたくない」 という抵抗が生まれたでしょう。

皆の納得感をつくるには、放置した場合の将来的なマイナス面を可視化することも有効です。「営業担当が変わるたびに運用の質がブレる」 「属人化が進み、特定の人が休むと業務が止まる」 「顧客満足度が下がる」 といった可能性を共有することで、理想への共感が生まれます。

[ステップ 3] 問題特定

理想を描いた後は、営業担当者の違いでスムーズに行く時とそうでない場合に、どんな要因があるかを掘り下げました。

わかってきたのは、営業担当者によって、社内への関連部署のメンバーへの説明で、案件が同じでも伝え方が違うことがわかりました。

具体的には、営業 A さんは、クライアントの背景や意図、期待、成果物の使われ方まで詳しく資料にして、その資料をもとに対面での会議を必ず行って、社内での共有を確実にやっていました。

一方の B さんは、社内に共有する仕様書の中身は最低限の情報のみでした。事前共有が少ない分、案件の社内運用開始のスタートは早いものの、その後に何度も仕様の確認が発生し、結局は非効率になっていました。

ここで重要なのは、問題を 「B さんの能力不足」 といった個人の問題に帰結させないことです。

本質的な問題は、B さんのようなやり方でも通用していた 「仕組み」 にあります。

  • 営業チームでの評価指標は 「案件獲得数」 のみで、情報共有の質が評価されていなかった
  • 教育プログラムに他部署との連携方法が含まれていなかった
  • 情報共有のフォーマットやツールが整備されていなかった

このように 「問題の構造」 に目を向けることで、個人を責めず、誰がやっても同じ結果が出る仕組みをつくるという、より本質的な解決策に辿り着けます。

[ステップ 4] 課題設定

問題設定のあとは、課題設定です。

問題と課題は別物です。問題とは理想と現実のギャップとして発生している望ましくない状態とその原因、課題とは、問題解決のためにやることです。

ここまでの営業の例に当てはめると、設定した課題は、担当営業の違いによる顧客案件の質のバラツキを小さくすることです。具体的には、営業が作成する仕様書や他部署への依頼書の共通化を図ることに決めました。

まずはうまくいっていることがわかった A さんのやり方を参考に、社内で共有する案件情報をフォーマット化しました。

[ステップ 5] 問題解決

共通の仕様書や依頼書のテンプレートを皆が使うようになり、営業担当者によるバラツキはなくなりました。業務効率アップは期待通りでした。

さらにフォーマットの共通化でチーム全体の顧客対応能力が向上するという効果が生まれました。

営業は顧客へのヒアリング項目として、仕様書や依頼書を使うようになり、顧客理解の抜け漏れがなくなり、営業以外の社内の他部署のメンバーも、案件情報が不十分なら積極的に営業に伝え、顧客への理解が深まるようになったのです。

社内の人材育成への効果も表れるなど、期待以上でした。

問題を主体的に解決するために

では、最後のパートでは、問題解決をより主体的に取り組むためのポイントを考えます。

測定しにくい成果をどう評価するか

理想提示型では 「目に見えない問題」 を扱うこともあり、解決後の成果も数値化しにくい場合があります。

例で考えたケースでも、業務効率化や案件対応レベルのチームでの全体的向上に加え、「営業チームの雰囲気が良くなった」 「他部門のメンバーとの会話が増えた」 といった定性的なポジティブな変化が生まれました。

こうした変化は簡単に数値で示せません。しかし 「兆し」 を丁寧に言語化し、価値として認めることが重要です。会議での発言内容の変化、Slack でのやりとりの質的な変化など、具体的な行動変容を観察し記録することで定性的な成果を可視化できます。

測定しにくい成果を評価できると、メンバーは 「この取り組みには意味がある」 と実感しやすくなります。その実感が、次の 「理想のアップデート」 へのエネルギーを生み出します。

理想をアップデートし続ける

プロフェッショナルとして相手や周囲の期待を超え続けるには、一度の問題解決で終わらせないことが重要です。

今回見てきた事例では、共通の社内資料のフォーマットの導入によって、「案件の業務オペレーションが確立し、誰でも同じようにまわせるチーム」 という理想は実現されました。

時間が経つとその状態が 「当たり前」 になります。これ自体は良いことですが、さらに高い理想を描けるかが、次の成長の分かれ目です。

次の理想は 「案件の仕様書や依頼書の全ての情報を社内でデータベース化し、過去の類似案件から学べる仕組みがあること」 や、「AI が案件情報から最適な運用体制を提案する仕組みの構築」 かもしれません。

つまり、理想提示型の 5 つのステップは、一度きりではなく 「継続的に回し続けるサイクル」 として捉えるべきです。

問題解決が完了したら、実現した状態を新しい 「現状」 として、また次の 「理想」 を描写する。そうすることで 「問題」 を定義し 「課題」 に落とし込み 「実行」 に移す。このサイクルを回すことで、組織は継続的に進化し、プロフェッショナルとしての価値を高め続けられるでしょう。

理想をアップデートし続けるには、定期的に 「今の現状で本当に十分か?」 と問い直す習慣が大切になります。

そうすることにより、問題の対症療法にとどまらず、常に一段高い視座から組織や事業を捉え、本質的な価値を提供し続けられます。

まとめ

今回は、「問題設定」 と 「問題解決」 の考え方を取り上げました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 問題設定には、誰が見ても問題が明らかな 「問題明確型」 と、理想を描いて初めて問題が見えてくる 「理想提示型」 がある
  • 相手の期待を超えるには、現状に満足せず 「あるべき姿」 を描き出すことから始める理想提示型のアプローチが不可欠
  • 理想提示型の 5 つのステップは、現状把握 → 理想描写 → 問題特定 → 課題設定 → 問題解決の順で進める
  • 理想の実現はゴールではなく、次の理想へ向かうための新しいスタート。理想提示型は継続的に回すサイクルとして捉え、常に次の理想をアップデートし続ける