今回は、お客さんの心理まで深く理解し、カスタマーサクセスを目指そうという話です。
アシックスのランニングシューズ 「S4」 を取り上げ、どのように顧客理解からカスタマーサクセスが実現されたのかを詳しく見ていきましょう。
サブ4 のためのシューズ S4
出典: アシックス
アシックスがマラソンで4時間のタイムを切るためのランニングシューズ 「S4」 を発売しました。
S4 で興味深いのはアシックスの社長が欲しいシューズを作ったという開発の背景です。
熱心なランナーでもあるアシックスの廣田康人 (ひろたやすひと) 社長 CEO 兼 COO が 「私が頼んで作ってもらった。サブ4を目指す専用のシューズがないのは変だねと思いついて、開発陣を呼んでお願いした」 と語り、自身が欲しいシューズの開発を指示したことを明かした。
フルマラソン4時間という中級者は、レース用シューズを履くべきか、トレーニング用を選ぶべきか迷うことが多い。廣田社長がサブ4向けシューズを要望した際、開発陣は 「さまざまなタイプのシューズを揃えている」 と説明したが、廣田氏は 「そうじゃないんだ。サブ4向けが欲しいんだよ」 と市民ランナーの心情を代弁したという。
学べること
出典: 産経新聞
ではアシックスの S4 から学べることについて掘り下げていきましょう。
ターゲット顧客の明確化
アシックスは上級者から初級者まで様々なランニングシューズをそろえてはいましたが、自身もランナーであるアシックス社長の目から見ると 「サブ4 向けのシューズ」 がありませんでした。
S4 はターゲット顧客を絞っています。お客さんをフルマラソンで4時間を切るサブ4を目指すランナーと明確にしました。サブ4 を達成した人と、これから4時間を切ろうとしている人です。
お客さんの規模感
ターゲット顧客を絞ることで向き合うお客さんが明確になりますが、かといって絞りすぎるとビジネスの規模が広がりません。自社のビジネスが成立しない市場ボリュームでは、ビジネスが持続可能ではなくなるという問題が発生します。
アシックスの S4 開発ではどうだったかと言うと、
アシックスによると、昨年の東京マラソンで4時間を切ったのは出場者の 30% 程度。サブ4を達成できないが、目指しているランナーも多い。
アシックスは、サブ4を目指すランナー層は商品化してビジネスにできる規模があると判断したのでしょう。
顧客理解からのカスタマーサクセス
アシックスの S4 から学べるのは 「カスタマーサクセス」 です。アシックスはお客さんにとっての成功は何か、どんな目的のためのシューズなのかを明確にしました。
以下はアシックスの社長の言葉です。
市民ランナーの中で、サブ4を達成しているかしていないかでは、勲章があるかないかのような違いがある。私はその勲章がほしいという気持ちがすごく大きかった
ターゲット顧客が望んでいることを 「サブ4 の達成」 とし、注目したいのはサブ4の達成を 「市民ランナーが勲章を手に入れること」 だと位置づけたことです。
学びを一般化すると自社商品の存在意義は何かです。商品はお客さんのどんな成功を支援するものかを定義する重要性です。 アシックスの S4 の存在意義はランナーが勲章を得ることを足元からサポートすることでした。
お客さんを理解してのカスタマーサクセスは次のように進めるといいです。
✓ 顧客理解からのカスタマーサクセス
- ターゲット顧客を定める
- 想定するお客さんがどういう文脈で何の目的のために使うかを深く理解する
- どんな成功 (サクセス) に貢献するのかを明確にし実現する
お客さんの行動と心理を理解しカスタマーサクセスを実現するのがマーケティングの役割です。
まとめ
今回はアシックスのランニングシューズ S4 を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 顧客理解からのカスタマーサクセス
- ターゲット顧客を定める。注意点はビジネスが持続可能にするために絞りすぎて規模が小さくならないようにする
- 想定するお客さんの置かれた環境を把握し、どういう文脈で何の目的のために使うかを深く理解する
- お客さんのどんな成功 (サクセス) に貢献するのかを明確にし実現する
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