投稿日 2023/06/28

富士薬品が販促実施状況を見える化。振り返りと改善の徹底からの効果的な PDCA サイクル

#マーケティング # #PDCA #振り返り


自社のマーケティング活動が効果的に行われていると自信を持って言えますか?
もしご自身が店舗運営に関わっているなら、本部の指示が適切に実行され、現場の結果や知見は本部に正確にフィードバックされているでしょうか?

これらの問いにイエスと答えられる企業は案外少ないのではないでしょうか。

今回は富士薬品の取り組みを通じて、PDCA サイクルの活用法や実行力を高める方法を探っていきます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

富士薬品の取り組み


ご紹介したいのは富士薬品の事例です。

販促の実施状況を見える化


富士薬品はドラッグストアや調剤薬局を展開していますが、本部で企画した店頭販促策の実施状況の見える化を進め、売上アップを目指しています。

従来は本部の指示通りに各店舗での販促が徹底されない場合があったようですが、見える化で一元的に実施状況がわかるようになり、店頭の売り方の改善につなげています。

このほど、電子マニュアルの作成支援サービスなどを手掛けるスタディスト (東京・千代田) の販促実行管理・支援システム 「ハンクラ」 をドラッグストア約950店に導入した。

本部が、商品の陳列の仕方や POP 物の設置の仕方などを記載した指示書を画像もつけながら作成。各店の担当者はタブレットなどで指示内容を見ながら売り場を作っていく。完成後はその売り場の様子を撮影し、本部に報告する仕組みだ。

導入の背景


富士薬品が店頭の販促状況を見える化した背景を見てみましょう。

一般的にチェーン店では店側が人手不足や、忙しい、指示の見落としなどの様々な理由で本部の指示に従わず、そもそも販促策を実施していないケースもある。本部のエリアマネジャーなどが店舗巡回して指導するが、人手には限界がある。クラウドを使うことで、巡回せず販促策が実施されているかがわかるようになる。

見える化の効果は?


販促状況を見える化したことで様々な効果がありました。

✓ 販促実施見える化の効果
  • 販促実施率の向上
  • 販促策を早く実施するほど売上が増える
  • 本部の指示から店頭での販促反映までのリードタイム短縮
  • 販促オペレーションの改善

詳しく順番に見ていきましょう。

富士薬品では商品の棚替えや、新商品のキャンペーンなどの販促の実施率が、システムの導入前は 60% だったのが、導入後では 90% まで上昇したという。

本部が指示してから店頭で実施されるまでのリードタイムもシステム導入で可視化された。

テスト導入時に、販促策を早く実施している店舗ほど遅い店舗より売り上げが増える傾向もわかった。新商品やキャンペーンの発売日や開始日に店頭に商品がしっかりと並んでいるかが結果を左右したとみられる。現在は、リードタイムを導入前の平均5日から2日まで短縮できたが、今後は 「1日以下にしたい」 (富士薬品) という。

興味深いのは、本部と各店舗の双方向のコミュニケーションがあることです。本部から一方的な指示で終わらず、現場からもフィードバックが共有されます。

システムではなぜ販促策を実施できないかを店側が記載できるようにしている。できない理由を傾向として捉えることで、オペレーションの改善につなげる。

例えば、そもそも本部側の指示内容が具体的ではなく、不明確であるため、店側がしっかり販促施策を実行できないこともある。富士薬品ではバイヤー職が店舗に販促策を指示しているが、店舗側の反応がわかることで、バイヤー個人個人が指示内容をわかりやすく伝えるノウハウを身につけることを期待する。

前半のまとめ


では、一度ここまでの内容をまとめておきます。

  • ドラッグストアの富士薬品は、店頭での販促施策の実施状況を見える化する取り組みを進めている

  • 導入の背景は店舗側が忙しいなどの理由で、本部からの販促施策が徹底されていなかった課題があった

  • 販促状況の見える化で販促実施率は上昇し、売上が増加。販促実施までリードタイムが短縮されただけでなく、本部と各店舗の販促オペレーションの改善にも貢献した


学べること


それでは、富士薬品の取り組みから学べることを掘り下げていきましょう。

学びを一般化すると PDCA サイクルで計画を実行に移し、やったことの振り返りから改善につなげる重要性です。

実行を徹底する仕組み


富士薬品の見える化の取り組みの背景は、本部から見ると店舗運営において以下のような問題がありました。

  • 指示をした販促が各店舗で実施されたがわからない
  • 実施していたとしても、本当にきっちりと実施しているかが見えない

ともすると本部の指示だけに終わり、せっかくの販促が現場では十分に効果を発揮していないという店舗もありました。

店頭での販促状況を見える化することで、店舗への抑止力や強制力が働きます。販促の実施率が上がっただけではなく、販促を徹底することで売上増にもつながったのです。

振り返りと改善


富士薬品の販促実施の見える化では、指定された販促施策をできない理由を店舗から聞くこともやっています。現場からのフィードバックが得られることで PDCA がまわります。

PDCA で大事なのは Check と Act です。

実行してそのままにするのではなく、やったことの中身や起こった結果を振り返ることが大切です。計画を立てただけで作成者には達成感が得られますが、計画立案の時点ではまだ道半ばです。

  • 計画を実行に移す
  • 実行内容と結果を振り返る
  • 振り返りからの気づきや学びを教訓にして次に活かす

言葉にして並べると当たり前のことで、PDCA は使い古されたり聞き飽きたことかもしれませんが、愚直に PDCA をまわす重要性を富士薬品の取り組みは教えてくれます。


まとめ


今回は、富士薬品の店頭での販促状況を見える化する事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 振り返りと改善の徹底を
  • 富士薬品は店舗での販促状況の見える化を進めている。計画を実行し、振り返りから改善につなげる PDCA サイクルから売上がアップした
  • 見える化により本部から店舗への実行力が働き、現場からはフィードバックが返ってくる仕組みになっている
  • PDCA は Check と Act が大事。計画の実行後に振り返りを行い、学びを教訓にして次に活かそう


マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。