投稿日 2023/06/05

サントリーがデータ分析で小売への営業力を強化。三方よしからデータで価値をつくる方法

#マーケティング #データ活用 #価値提案


データ分析を活用して戦略を組み立てることは、ビジネスを成功させる鍵となります。では、具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか?

今回は、サントリーの事例を通じて 「隠れた販売機会の発見」 と 「三方よしの理念の反映」 からデータ分析をビジネスに活かす方法を探求していきましょう。

サントリーのデータ分析


サントリーがデータ分析を活用し営業を強化しています。

小売への営業に活用


ID-POS データ分析から、サントリーはコンビニやスーパーなどの小売チェーンへの販促や売場づくりを提案しています。

日本では人口減少が続いており、小売りチェーンにとっては縮小する市場でいかに生き残るかが大きな課題となっている。ロイヤルカスタマーを育成するため、店舗を訪れる顧客ニーズをより深く理解しようとする動きが強まっているという。

そうした中、自社の ID-POS データを分析・活用する先進的な小売りチェーンが出てきた。サントリーとしても、利用客の購買活動を理解し、小売りチェーンにとってメリットのある販促や売り場づくりを提案する必要に迫られていた。

家庭用統括部の前田由紀子課長は 「こうした動きは2019年くらいから一気に広まりました。弊社でも ID-POS データを分析するシステムを開発し、活用しています」 と説明する。

データ活用の事例


サントリーのデータ分析と活用について詳しく見てみましょう。

別のスーパーでは、自社で蓄積した ID-POS のデータを思ったように分析・活用できずにいた。そこで、サントリーに対して適切な施策を考えるために、データ分析をしてほしいという依頼があった。

これまでは、お酒のカテゴリーにおいて、全体の売り上げ上位を占める商品に注目し、そうではない商品をカットする傾向があった。しかし、同社が分析したところ、売り上げはそれほど大きくはないが、来店のリピートにつながっている商品を発見。商品を評価する新しい基準の提案につなげた。分析対象とするのは自社商品だけではなく、競合他社の商品も含んでいる。

また、棚割りの改善にもデータ分析を役立てた。例えば、買い回りが起きやすいグループを 「高アルコール」 「レモンサワー」 などと分類。レモンサワーをよく買う人は、サントリーの A 商品と他社の B 商品を一緒に買うことが多いことを突き止めた。

家庭用統括部の丸田健悟氏は 「一緒に購入されやすい商品を提案することで、売り上げ増につながりました」 と説明する。

学べること


ではサントリーの取り組みから学べることを掘り下げていきましょう。

データ分析からの機会発見


サントリーが独自のデータ分析でやっていることは、小売が気づいていない販売への機会発見です。

具体的には、

✓ データ分析からの機会発見
  • 売上はそれほど大きくはない商品が来店のリピートにつながっている
  • レモンサワーをよく買う人はサントリーの A 商品と他社の B 商品を一緒に買うことが多い

ID-POS というお客さんに販売した定量データからの分析によって、小売の現場では十分に把握できていない来店や購入の傾向を見出しています。

三方よしのデータ活用


サントリーは自社の都合だけを押し付けるのではなく、競合他社まで入れたデータ分析から小売へのメリットをつくって提案しています。注目したいのは、まずは小売のメリットを提案していることです。そして、その提案の中に小売にとってのサントリーの商品を意味や具体的な販売方法を入れています。

サントリーのアプローチには 「三方よし」 があります。

三方よしとは、もともとは江戸時代中期の頃から近江商人が信用を得るために大切にしてきたとされる理念です。

✓ 三方よし
  • 買い手よし
  • 売り手よし
  • 世間よし

サントリーのデータ分析から小売への営業・提案を三方よしに当てはめると、

✓ サントリーの三方よし
  • 小売の来店客や売上が増える
  • サントリーの商品販売が増加する
  • 消費者には欲しい商品が店に売られ、買いやすい商品棚になっている (無駄に歩き回らなくて済む) 

三方よしの特徴は売り手という自分だけではなく、お客さん (買い手) 、さらには世の中全体 (世間) にまで視野を広げているところにあります。

つい目が行きがちなのは売り手である自分にどれだけメリットがあるかです。三方よしが教えてくれるのは、買い手という直接のお客さん、そして世の中や社会全体にもメリットがあるかまでを考える重要性です。

定量データ分析は手段です。仮説や価値提案があって、検証や説得力を高めるためのものです。自社の都合ではなくお客さんと世の中をより良くするためのデータ分析でありたいです。


まとめ


今回はサントリーのデータ活用から学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 三方よしからデータで価値をつくる方法
  • 三方よしは売り手よし・買い手よし・世間よし
  • 直接の買い手だけではなく世の中全体への貢献まで考えることが大事
  • データ分析は仮説や価値提案があり検証や説得力を高めるため。お客さんと世の中をより良くするデータ分析を


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。