新しい価値を生み出す。簡単なようで難しいですよね。もしも子どもでも楽しめるゲームから学べる価値創出の秘訣があったとしたら、どうでしょうか?
実は一見無関係に見えるおもちゃの 「人生ゲーム」 から、ビジネスのヒントを得ることができます。今回は人生ゲームに学ぶ、新しい価値と競争ルールのつくり方という話です。
人生ゲーム
人生ゲーム ゴールデンドリーム (出典: タカラトミー)
今回は人生ゲームを取り上げます。
人生ゲームの歴史
まずは人生ゲームの歴史を見てみましょう。
" ~ 人生、山あり谷あり ~ " のコピーで始まるテレビコマーシャルと共に 「人生ゲーム」 が日本で発売されたのは、1968年 (昭和43年) のことでした。
日本の GNP (国民総生産) が西ドイツを抜いて世界第2位になり、3億円強奪事件が世間を騒がせていた頃、そして世紀の大イベント 「日本万博博覧会」 を2年後に控えてまさに 「いざなぎ景気」 に沸く、高度成長の絶頂期でした。
(中略)
1960年に米国で生まれた 「THE GAME OF LIFE」 を原型に日本版としてつくられた 「人生ゲーム」 は発売以来、シリーズ商品を含め現在まで累計約1,500万個以上販売しています。
全く新しいすごろく
人生ゲームはすごろくの概念を変えました。タカラトミーの公式サイトにはヒット要因と伴に次のように書かれています。
盤ゲームといえば、サイコロを振っていかに早くゴールを目指すかという、いわゆる "すごろく" 式のゲームしか存在しなかった当時、"人生" というテーマ、自分を表すピンを刺した自動車型のコマ、ボード上の立体的な山や建物、ドル札を模したおもちゃの紙幣のやり取り、そしてなによりサイコロの代わりに回すルーレットは画期的なものとして受け入れられ、「人生ゲーム」 は子供から大人まで夢中になる大ヒット商品となりました。
(中略)
ヒットの要因は、単に商品としての新しさだけではありません。ゲームの中で就職や結婚など人生に関わるさまざまな出来事を疑似体験し、そこに繰り広げられる波瀾万丈なもう一つの人生に一喜一憂することができるのです。
しかも勝負の行方がほとんどルーレットの目にかかっているので子供も大人も対等に勝負することができます。家族や友達が顔を突き合わせて、ゲームの中だけでも運をつかんで億万長者を夢見ることができる、またプレイする度に全く違った結果になる。これがファミリー層を中心に 「人生ゲーム」 が50年間親しまれてきた要因なのです。
学べること
では人生ゲームから学べることを掘り下げていきましょう。新しい価値をどうやって生み出すかに示唆があります。
価値イメージのアップデート
すごろくの遊び方を変えたのが人生ゲームです。マーケティングの視点で捉えると、人生ゲームは人々の 「すごろくへの価値イメージ」 をアップデートしたということです。
従来はすごろくは誰が一番早くゴールするかを競う遊びでした。人生ゲームはゴールへの早さを競いつつも、1位でゴールをしなくても最終的な勝利者になれます。
価値イメージの書き換えで注目したいのは、ゲームでのゴールへの過程です。
1つ1つのマスにあるイベントでは波乱万丈の展開が繰り広げられます。自動車での旅、パートナーとの結婚や子どもが生まれたり養子を迎える、お金や借金、保険や株、家 (不動産) 、職業選択や転職などともう1人の自分が人生を重ねていく楽しさがあるゲームです。
人生ゲームはすごろくの新しい遊び方を提案し、人々の 「すごろくとはこういうもの」 への認識を変え、新しい価値イメージをつくったのです。
新しい競争ルールをつくる
人生ゲームからのもう1つの学びは新しい競争ルールを自らつくりにいく重要性です。
人は今までになかった新しい価値を知ったり実際に体験をすると、そのカテゴリーにおける 「良い商品」 の定義が変わります。少し大げさな表現をすれば、カテゴリー内や市場での地殻変動が起こります。
ここで言う地殻変動とは、新しい価値の提供によって消費者の良い商品の定義や買う基準 (選ぶ理由) が変わることです。それまでの基準で買われていたものとは異なる商品・サービスが選ばれるようになります。
良い商品の定義が変わるとは、そのカテゴリーや市場の中での 「競争ルール」 が変わるということです。
競争とは自社と競合他社における 「お客さんから選ばれる争い」 です。競争ルールは選ばれるための前提や制約、選ばれる理由と見ることができます。
人生ゲームに当てはめれば、今までにはなかった 「すごろく × 人生」 という掛け合わせで新しい価値をつくり出したことで、買うなら 「波乱万丈の人生を追体験できるすごろくゲーム (= 人生ゲーム) が欲しい」 という人生ゲームを選ぶ理由が新しく生まれたのです。
まとめ
今回は人生ゲームを取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ 新しい価値と競争ルールのつくり方
- 新しい価値提案によって人々の 「良い商品とはこういうもの」 への認識が変わる
- 新たな価値イメージによって良い商品の定義や選ぶ基準が変われば、従来とは異なる商品・サービスが選ばれ市場での地殻変動が起こる
- お客さんに新しい価値を提案し、新しい競争ルールを自らつくりにいこう
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