投稿日 2023/06/18

あんぱんの木村屋が若年獲得に注力。新規顧客を増やす方法

#マーケティング #新規顧客 #価値提案


これまでと同じことを繰り返すだけでは、新しいお客さんが来てくれるありません。では、どうすれば新規のお客さんを獲得することができるのでしょうか?

今回は、伝統あるあんぱんの老舗 「木村屋」 の事例から、マーケティングに学べる新規顧客を増やすポイントを探ります。

木村屋あんぱん



今回取り上げるのは、あんぱんの木村屋の事例です。

背景の課題感


まずは背景から見ていきましょう。コロナ禍で客足が鈍り売上が減少しました。

1869年創業の木村屋は、明治天皇にもその味を認められたという 「酒種 (さかだね) あんぱん桜」 を武器に店舗を拡大してきた、日本を代表する製パン企業。銀座本店のほか、首都圏の百貨店を中心に直営店を多数かまえる。

老舗というイメージが強いためか、どこか 「気後れするというイメージを持たれがちで、客層が固定されていました」 。そう話すのは、同社で営業部長を務める植木一茂さんだ。木村屋が持っていた客層は60代以上が8割で、シニア世代がメイン。コロナ禍以降、感染による重・重症リスクが高いとして一気に客足が落ちた層と重なっていた。「当社は、直営店の大半が高齢者の優良顧客を多く抱える百貨店に集中しています。コロナ禍の影響は大きく、20年度は売り上げが 30% ほど落ちました。ターゲット層を拡大することと、店舗だけではなく販売チャネルを増やすことが急務でした」 (植木さん) 

栄養食への着目


お客さんを若年層に広げるために木村屋が力を入れたのは栄養食でした。

そこで同社が注目したのが 「栄養食」 だ。コロナ禍以降の生活習慣の乱れを改善したいと 「タイパ (タイムパフォーマンス) 消費」 を重視するヤング ~ ミドル層を中心にニーズが高まっていた。


日清食品から、完全メシあんぱんの開発オファーを受けたのもちょうど同時期だ。

 (中略) 

木村屋の歴史をたどると、古くは 「明治初期の頃、『パン食は脚気 (かっけ) に効果がある』とされ、木村屋初代当主、安兵衛のパン屋は繁盛した」 (植木氏) こともあった。食べながら健康に寄与することは、過去より木村屋にとって重要なキーワードだったため、日清食品とのコラボ商品と並行して 「栄養食」 に結び付く新商品の開発に注力した。

SNS の活用


若年層に訴求をするために木村屋は SNS も積極的に活用しています。

EC サイトは、SNS 連携によってさらなるターゲット拡大に努める。利用するのは主に Instagram と Facebook 、Twitter 。投稿画像に商品タグをつけることで SNS から直接、EC サイトの購入画面へ移行できるように工夫した。「コンバージョン率も徐々にではありますが増えています」 (木村屋で広報担当を務める東谷千尋さん) 。

Twitter は、木村屋の人気商品 「ジャンボむしケーキ」 のプレゼントキャンペーンなどの実施にも活用する。定期的に新フレーバーを発売しているジャンボむしケーキの 「次に出てくるフレーバー予想」 「食べたいフレーバー希望」 などをつぶやいてもらうことで、ヤング層の取り込みにも注力。試行錯誤のかいあって、22年末 「#ジャンボむしケーキ」 はトレンド入りも果たした。

学べること


では木村屋の取り組みから学べることを掘り下げていきましょう。

新規のお客さんをどうやって増やすかに学びがあります。

新しいお客さんを増やす方法


木村屋はシニア層がお客さんの中心だったわけですが、シニアでお客さんが固定されたのは今までやってきたことの結果です。

これまでと同じことを繰り返すだけでは、若年層という新しいお客さんを獲得することはできません。今までと違う取り組みが必要になるわけで、新規のお客さんの文脈に沿った新しい価値提案が大事です。

木村屋の例では新しく栄養食に着目しました。日清とのコラボから 「完全メシあんぱん」 も出したり、自社の独自商品の開発にも着手しています。これらをマーケティングの観点で捉えると 「あんぱんの新しい価値提案」 です。

消費者が持つ一般的なあんぱんへのイメージは昔からある庶民的なパンなので、若年層にとってはともすると古いものに見え、「自分向けの食べ物ではない」 という認識になっている人もいるでしょう。

こうしたあんぱんのイメージを 「手軽に食べられ栄養が取れる食べ物」 という新しい価値イメージを訴求しました。若年層という新しいお客さんに魅力的に思ってもらうことを狙っているわけです。

新規のお客さんを獲得するためには、これまでと違うマーケティングや営業活動から新しい価値提案をすることが大事です。

価値提案と媒体


Instagram や Twitter 等の活用も新規のお客さんがこれらを使っている、つまり若年層がいるメディアなので提案を届ける手段として有効です。

ただし若年層を狙うのだからインスタと安易に考えてはいけません。インスタ等の SNS はあくまで情報を届ける手段で 「お皿」 なのです。

大事なのはお皿の上の料理、つまり価値提案です。未顧客に提案する価値の中身があってこその SNS などの情報メディアです。

未顧客の理解がベースにあり、相手の文脈に沿った商品特徴の意味づけ、価値提案、伝える情報媒体 (お皿) まで流れがつながり一貫性があることが重要です。


まとめ


今回は木村屋のあんぱんの事例から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 新しいお客さんを増やす方法
  • これまでと同じことを繰り返すだけでは新しいお客さんを獲得することはできない
  • 今までと違う取り組みから新規顧客が自分ごと化できる新しい価値を提案する
  • 未顧客の理解し、相手の文脈に沿った商品特徴の意味づけ、価値提案、コミュニケーションで具体性と一貫性が大事


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。