投稿日 2023/06/10

高級ホテルの断食プラン。新しい現実での新しい問題を見出し、価値を提供する方法

#マーケティング #問題設定 #価値提供


既存の商品やサービスを、どのように価値ある新たな体験に変えることができるでしょうか?

今回のキーワードは 「問題設定」 と 「価値提供」 。どのようにお客さんの新たな課題を捉え、新しい価値を生み出すのかが掘り下げるテーマです。

おもしろいと思った高級ホテルの断食プランから、新しい現実での新しい問題を見出し、価値を提供する方法をぜひ一緒に学んでいきましょう。

高級ホテルで断食プラン


ご紹介したいのは高級ホテルでの断食プランです。1泊2日で4万円からです。

東京都内の高級ホテルで1 ~ 2泊から体験できる断食 (ファスティング) プランが注目されている。新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化に向かうなか、食事や睡眠などのリズムが乱れる人も多い。

無理のない断食でくつろぎながら体調を整えたい人の利用が30 ~ 50代を中心に増え、「ザ・プリンス パークタワー東京」 (東京・港) では2022年度の利用が20年度比5倍に伸びている。

断食プランの中身


断食2日目の昼食メニューの回復食 (出典: ザ・プリンス パークタワー東京

気になる断食プランの中身を見てみましょう。

ザ・プリンス パークタワー東京が断食プランを発売したのは09年。全く食事をとらないわけではなく、管理栄養士が監修した専用メニューが提供される。当初は2泊3日のプランで期間限定の販売だったが、リニューアルを経て、現在は1泊2日のプランで通年販売している。

1日目の夕食に炭酸水や温かい豆乳のチャイ、カモミールのハーブティー、2日目の朝食に果汁 100% のリンゴジュースやしょうが成分を加えたお茶が提供される。昼食は断食からの回復食で、米粉の野菜パンケーキだ。

食事や飲み物は客室まで従業員が届ける。部屋には体重計やスキンケアセットが用意され、施設内のスパやフィットネスジムは滞在中何度でも使える。

利用者の声


断食プランを利用した人の評価はと言うと、

 「出社する機会が増えたほか、最近は夜遅くまで仕事をすることが多く、体調を整えたくて」 。都内のコンサルティング会社に勤める中村知夏さん (28) は1月28 ~ 29日、ザ・プリンス パークタワー東京の断食宿泊プランを初めて利用した。「景色もよく1泊ならストレスを感じないだろうと思った」 と語る。

 (中略) 

料金は1人あたり4万円程度から。中村さんは 「無理なく断食でき、目覚めが心なしかよくなった」 と満足げだ。

コロナ禍の影響は長引いているものの、徐々に経済活動は正常化に向かい、在宅勤務を見直す会社員や延期していた案件に再び追われる社会人も増えている。

断食プランはコロナ下の生活に慣れた体を 「一度リセットして整えたいという需要をとらえている」 (同ホテル) ようだ。ザ・プリンス パークタワー東京では22年度の利用 (予約分含む) が20年度比約5倍に。コロナ禍前に利用していた40 ~ 50代に加えて30代も増え、女性客や 「お一人様」 が多いという。

学べること


では高級ホテルの断食プランの話から、学べることを掘り下げていきましょう。

断食プランの提供価値


断食はやろうと思えば自宅で1人でもできます。食費がほとんどかからないという意味で、お金をかけなくてもできることです。

注目したいのは、高級ホテルでの断食プランには1泊4万円以上を払って断食にお金をかけたい人がいることです。それだけのお金を払う価値があるからですが、アフターコロナに向けて身体も心もリセットし、確実に断食を成功させリセットして整った自分になれる未来への投資です。

ここに断食プランの価値があります。

新しい現実での新しい問題


高級ホテルでの断食プランは、新しい現実により発生した問題を解決したいニーズに応えています。

新しい現実とはコロナ感染拡大による社会的な制約状況を経て、ようやく経済活動が正常化しつつあることです。

ようやく開放された新しい状況になったもののコロナ禍での体型変化、社会変化や働き方の変化にまだ追いついていないこともあり、あらためて心身をリセットしたいという生活者心理が生まれました。ところが心身のリセットを 「自分ひとりではうまくできないかもしれない」 という問題が起こったわけです。

問題の解決と提供価値


新しい現実での新しい問題に対して、高級ホテルだからこそできる解決方法が1泊2日の断食プランです。ホテルが提供する非日常の環境にあるホテルルームで 「缶詰状態」 になれ、日常の喧騒から離れリラックスできます。断食をサポートしてくれるスタッフもいて安心です。

自宅では一人では難しそうな断食からのリセットでも、ホテルの断食プランなら確実にできる価値があるから人は4万円でもお金を払いたいと思うのです。

ホテルは通常の食事よりも質素にでき、原価率が低いサービスというのもビジネスの着想として興味深いです。

問題設定から価値を提供する方法


ホテルでの断食プランの事例からの学びを一般化すると、

✓ 問題設定から価値を提供する方法
  • 重視するお客さんを決める
  • お客さんを取り巻く環境での事象を新しい現実として把握する
  • 新しい現実で起こっている新しい問題を見出す
  • 問題への自分たちならでは解決方法をつくり、お客さんに他にはない価値を提供する
  • お客さんから満足してもらいお金をいただく

以上が問題設定からの価値提供の流れです。


まとめ


今回は高級ホテルでの断食プランを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 問題設定から価値を提供する方法
  • 重視するターゲット顧客を決める
  • お客さんを取り巻く環境での新しい現実を把握する
  • 新しい現実で起こっている新しい問題を見出す
  • 問題への解決方法をつくり、お客さんに他にはない価値を提供する
  • お客さんから満足してもらいお金をいただく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。