投稿日 2023/06/17

シノプスが小売店の AI 需要予測で物流問題を解決。お客さんへの価値の伝え方

#マーケティング #提供価値 #伝え方


新しくテクノロジーが進化し、世の中のトレンドが変化する中で、お客さんが抱える課題も変わり続けます。では、お客さんの課題に対して、自分たちが提供する価値を伝えられているでしょうか?

今回は、AI による需要予測を活用して小売の物流問題を解決するシノプスの事例を通じて、「お客さんへの価値の伝え方」 を一緒に学んでいきましょう。

小売店の AI 需要予測で物流を改善


ご紹介したいのは、シノプスという自動発注システムを手掛ける会社の事例です。

AI で需要予測


小売店の需要予測を AI を使って物流を効率化する取り組みです。

自動発注システムを手掛けるシノプスは、小売店の需要予測データを活用して物流センターへの発注を早め、トラック運用の効率化につなげる提案を始める。先行して取り組むスーパーではトラック便が2割減る効果も出ており、今後5年で大手スーパー30社への導入を目指す。

 (中略) 

 「流通業界が抱える物流問題の劇的な改善トリガーになるかもしれない」 。シノプスの南谷洋志社長が手応えを語るのは、新潟で約40店舗を展開する中堅スーパー、ウオロク (新潟市) での試みだ。

シノプスは人工知能 (AI) が過去の販売実績や天気予報などをもとに各店舗の需要を予測し、適切な数量を自動発注するシステムを手掛ける。AI の需要予測を活用し、物流センターへの発注を前倒しする取り組みをこのほどウオロクと始めた。

導入の背景


AI の需要予測を導入する背景を見てみましょう。

ウオロクではこれまで、商品の発注はベテラン従業員が経験を頼りに人力で行っていた。店舗での欠品リスクをなるべく減らすため、物流センター側は配送当日の正午まで注文を受け付け、午後7時までに商品を届ける運用をしていた。

 「物流センターのスタッフが発注量を正確に予測するのが難しく、必要以上のトラックを手配してしまうこともあった」 (ウオロク) という。

物流改善の効果


需要予測と自動発注システムを活用することで改善されました。

出典: 日経

改善に向け、需要予測データを活用して発注の締め切りを配送前日の正午に早めた。

その結果、翌日に必要な商品数を把握しやすくなり、これまで週に35台手配していたトラックは27台に減少する効果が出た。8割超にとどまっていた平均積載率も 95% に高まったという。当初は欠品が増える恐れもあったが、AI の予測精度は 「ベテラン従業員並み」 (シノプス) で、欠品率は 0.1% しか上昇しなかった。

学べること


ではシノプスの小売の物流改善の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

シノプスの解決策と提供価値


シノプスの需要予測と自動発注は物流トラックやドライバー不足を解消するシステムです。

これまでは当日の正午までに店が発注を入れ、夜7時までに店に届くという対応がされていました。発注を受ける物流会社からすると、発注当日に店舗に届ける必要があり余裕はありません。発注された分を届けるために配送トラックを多めに手配することで対応していました。

各社がこのようにやることで業界全体で無駄が生じ、トラックや人手不足につながる問題が発生していたわけです。

シノプスの発注システムは AI が需要をベテラン小売担当者と同レベルで予測します。発注タイミングも当日のぎりぎりではなく前倒しを実現しました。請け負う物流会社はトラックやドライバーを適切に配置できます。

以上がシノプスの解決策と提供価値です。

お客さんにとっての価値の伝え方


マーケティングの観点ではシノプスの事例からは 「お客さんへの価値の伝え方」 に学びがあります。

学びを一般化すると、商品・サービスがお客さんにとってどんな意味があるのか、本質的なお客さんへの価値は何かを明確にする重要性です。

シノプスの例では、発注のタイミングが前日にできることは小売や物流会社にとってどんな意味や価値があるかです。小売は発注を機械に任せることができ、物流会社にとっては発注情報が来るのが早くなった分だけ余裕をもった準備ができ、貴重なリソースを使いすぎることがなくなります。

お客さんへの伝え方として 「発注タイミングが前倒しになります」 だけでは説明が十分ではありません。前倒しになる意味合いをお客さんにとっての価値に変換し伝えることが大事です。お客さんの自分ごと化につながります。

それはお客さんにとってどんな意味や価値があるのか。お客さんへの説明で主語を商品にするのではなく、主語をお客さんにして価値を説明しお客さん目線で伝えるといいです


まとめ


今回はシノプスが小売店の AI 需要予測で物流問題を解決しているという事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ お客さんへの価値の伝え方
  • 商品・サービスがお客さんにとってどんな意味があるのか、本質的なお客さんへの価値は何かを明確にする
  • 商品特徴を価値に変換して伝えることで、お客さんは商品のことを自分ごと化する
  • 主語を商品にするのではなく、主語をお客さんにしてお客さん目線で価値を伝えよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。