何かを調べたいと思ったときに、まず何をしますか？手元のスマホから検索をするでしょうか？
これこそが ｢マイクロモーメント｣ 。その瞬間がビジネスチャンスに変わります。
今回は、マイクロモーメントとは何か、その重要性と具体的な活用方法、成功事例を詳しく解説します。消費者行動を理解し、自社のビジネスにどう活用すればいいのかをぜひ一緒に学んでいきましょう。
マイクロモーメントとは
マイクロモーメントとは、人が ｢何かをしたい｣ と思ったときに、反射的にスマートフォンやタブレットなどから検索をする瞬間 (モーメント) のことです。
スマートフォンの普及がもたらした消費者行動に対し、適切なタイミングで生活者に接する重要性を示す Google が提唱した概念です (Google による日本語での解説記事はこちら, 英語版はこちら) 。
Google はマイクロモーメントを4つのタイプに分類しました (詳細はこちらの Google の PDF) 。
- 知りたい I‐want‐to‐know moments
人との会話やテレビを見ている中で、知りたい情報や新しい知識を得るために検索をする瞬間。 - 行きたい I‐want‐to‐go moments
たとえば食事をするために近くの飲食店を検索したり、何かを購入するために周辺のお店を検索する瞬間。 - したい I‐want‐to‐do moments
自宅でクッキーを焼きたい、本棚を DIY で作りたい、かわいいメイクをしたいと思ったときに、その方法を求めて検索する瞬間。 - 買いたい I‐want‐to‐buy moments
何かを買いたいと思ったときに、商品やサービスのことを調べたり、口コミやレビューを検索する瞬間。
生活者はこれらの瞬間に情報を求め、ブランドや製品を選択しそのまま購入にまで至ることもあります。
なぜマイクロモーメントは重要なのか
マイクロモーメントが重要な理由は、生活者の購買行動が変化し、従来のマーケティング手法だけでは効果的にマーケティングや販売ができなくなっているからです。
スマートフォンの普及により、生活者はいつでもどこでも情報にアクセスし、必要な情報を得たり買い物をすることが可能になりました。こうした生活者のニーズに対し、企業などの事業者はそのタイミングで必要とする情報やサービスを提供することが求められます。
マイクロモーメントは、生活者を理解し、適切なタイミングで自社製品やサービスの情報を伝えるためのガイドラインの役割を果たします。
マイクロモーメントの活用
では、マイクロモーメントをどのように活用すればいいかを見ていきましょう。
マイクロモーメントをビジネスに有効に活用するためには、以下の5つのポイントを押さえることが大事です。
- 生活者の ｢検索の意図｣ の理解
生活者やターゲット顧客の検索クエリ (検索に使ったキーワード) や行動パターンを分析し、どのような情報やサービスが求められているのかを理解しましょう。 - 有益な情報やコンテンツからの価値提供
マイクロモーメントにおける生活者ニーズに対して関連性のある有益な情報を提供します。たとえばノウハウが入ったハウツーガイド、教育的なコンテンツなどです。 - スピードと利便性の向上
マイクロモーメントでは人は迅速に情報や解決策を求めます。ウェブサイトの表示速度を早くし、ユーザーが必要なものをすぐに得られるようにします。最小のタップ数での購入やモバイル決済が使いやすいなど、スピードと利便性を高めることが大事です。 - モバイル最適化
スマートフォンがマイクロモーメントの主要なデバイスであるため、ウェブサイトや広告がモバイルに最適化されていることが重要です。表示速度や文字の見やすさなどモバイル向けに使いやすくします。 - ローカル検索の最適化
マイクロモーメントには、近くの店舗やサービスを検索して調べたいという意図があります。Google My Business などの掲載情報が正確で最新のものであることが求められます。ローカル検索結果での視認性を高め、特定の場所に対するマイクロモーメントに応えます。
活用事例
では、生活者のマイクロモーメントをうまく捉えた成功事例を一緒に見ていきましょう。
アメリカのホテルチェーンであるレッドルーフイン (Red Roof Inn) です。マイクロモーメントを効果的に活用した成功事例として注目に値します (詳細レポートはこちら) 。
狙ったマイクロモーメント
狙ったモーメントは突然の航空便のキャンセルや大幅な遅延が発生した時でした。
旅行者にとっては予期せぬことで、日程変更による宿泊のためにホテルを調べて予約をし、その日の宿泊場所を急いで確保したいというマイクロモーメントです。
施策
このマイクロモーメントを活用するため、レッドルーフインは公開されているフライトキャンセルデータを利用し、次のような施策を実施しました。
- ターゲティング広告: フライトのキャンセルや遅延により急な予定変更を迫られた旅行者に向けて、広告キャンペーンを展開。フライトキャンセルデータを使い、影響を受けた旅客者が多い空港を予測し、広告配信をそのエリアに集中させた
- リアルタイム入札: リアルタイム入札を用い、フライトキャンセルの発生タイミングでより高い確率で広告が表示されるようにした
- ローカル検索最適化: 検索した旅行者の検索結果に近隣のホテルが表示されるように、ローカル検索の最適化を実施した
成果
マイクロモーメントが生じた旅行者を効果的にターゲティングすることで、レッドルーフインはホテルの予約数を増加させました。通常時のスマホからの場合に比べて予約数が 266% 増加しました。
レッドルーフインの事例は、マーケティングにおいてマイクロモーメントの把握と対策がいかに重要かを示しています。
ターゲット顧客の ｢検索の意図｣ を理解し、その瞬間にタイムリーに有益な情報などの解決策を提供することで、レッドルーフインはマイクロモーメント時の予約数を増やし、売上を増加させることができたのです。
おわりに
今回は Google が提唱する消費者行動の概念 ｢マイクロモーメント｣ を取り上げました。
マイクロモーメントは、消費者の購買行動がスマートフォンの普及と共に進化している現代において、マーケティングに欠かせない概念です。
消費者が情報を求め、購入を決定するその瞬間を理解し、そのタイミングで適切な情報やサービスを提供するためのガイドの役割を果たします。
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください！