投稿日 2023/06/02

昭和の近所付き合いが令和で復活。変わらない人の本能を満たす方法とは?

#マーケティング #顧客理解 #価値提供


昭和の近所付き合いが令和で復活?

不思議に思えるかもしれませんが、背景には一体何があるのでしょうか?

今回は、人の本能と現代のテクノロジーが交差するポイント、変わらない人の本能を叶える方法、そしてこれらがマーケティングにどう活きるのかを一緒に見ていきましょう。

昭和の団地が人気に


かつての昭和時代の団地での日常 (出典: 産経新聞

昭和の住宅団地が人気を呼んでいるとのことです。

自宅のドアを閉めれば、他人と関わらずに過ごせる都会の集合住宅。気楽な半面、ご近所との井戸端会議 (≒ 情報共有や助け合い) の習慣は廃れた。

そんな令和の時代に、昭和の団地の良さと IT を掛け合わせたリノベーション団地が、入居待ちの絶えない人気物件となっている。ポイントは、住民交流を後押しするマネジャーの存在だ。住みやすさは建物 (= ハード面) だけでは成立しない。良質なコミュニティーづくりというソフト面への注目が高まる。

住宅団地ではどのような取り組みをしているのかを続けて見ていきましょう。

団地 (引用者注: 埼玉県草加市のハラッパ団地・草加) に、月1回のイベントを企画運営する2人のコミュニティーマネジャーが配置された。

取材日の日曜。敷地内の農園では親子が土を耕し、集会室前の広場では 「ガンバレ!」 「いい音!」 の掛け声。25人が参加して餅つき大会が行われ、つきたてを雑煮やあんころもちにしてほおばっていた。

 「昔の良い風習、季節行事。子供たちの思い出に残る催しをやっていきたい」 と、マネジャーの町田国大さん (40) 。「道具や材料は用意しますが、主体は住民の方々。毎回率先してくれる料理上手なお父さんもいて、いい雰囲気が醸成されている」 

同じくマネジャーを務める山本恵美さん (42) は 「住民からのアイデアもお待ちしています。家族世帯の一方、住民の 33% を占める単身者にも役立つような場の活用、企画も考えてみたい」 。催事の告知や申し込みなど、担当者と住民間のやりとりは LINE 。この日も 「炊飯器が足りない」 と呼びかけると、すぐに3台が集まった。

住宅団地にはコミュニティマネージャーの役割を果たす住民がいて、連絡のやりとりは LINE を使います。イベントの企画と実施は住民が主役になっていて、皆が気軽に参加できるコミュニティです。


近所付き合いを促すアプリ GOKINJO



もう1つご紹介したい事例は、同一マンション住民のみ限定で使う交流アプリ GOKINJO (ゴキンジョ) です。

GOKINJO の主な機能は3つあり、情報交換、お譲り、お助けです。
最もよく使われているのが 「情報交換」 だ。いわゆるネット上にある SNS や掲示板のような機能で、ユーザーが投稿した話題に返信することでスレッドがつづられていく。

例えば 「アスレチックのある公園を教えてください」 という投稿に、他のユーザーが近所の公園を薦めるなど、数多くの身近な話題が投稿されている。シンプルなコミュニケーション機能だが、1棟のマンションという限られたコミュニティーならではの投稿も多く見られたという。

 (中略) 

 「お譲り」 は、家庭で不要になったものを他のユーザーに無料で譲る機能だ。ハンガーや小物、家具など、さまざまなアイテムが1年間で69件出品され、そのうちの 85% は譲り先が決まった。特に多かったのが玩具や絵本などの育児用品。ベビーベッドや子供用自転車など大きいものでも梱包せず、同じマンション内に住む人に手渡しできるというのも GOKINJO ならではだ。

手を貸してほしい、物を貸してほしいという困りごとを解決するために用意されたのが 「お助け」 機能。「ちょっとした作業に使うための電動ドライバーや、お食い初めの写真を撮るために子供用の椅子をリクエストするなど、一時的に使う物の貸し借りが多い印象」 (アプリを共同開発した旭化成ホームズ経営企画部の根本由美氏) 。

学べること


では学べることを掘り下げていきましょう。

古き良き時代のものを進化


昭和の団地やマンション入居者限定の交流アプリは、古き良き時代のものを今の時代に合わせて進化させています。

昔は近所付き合いとして日常的にやっていたことを LINE や専用アプリと組み合わせることで、今の人も気軽に参加できる仕組みにしました。

人の本能を叶える


古き良き時代と思えるものには人が本能的に求める心理があります。

✓ 変わらない人の本能の例
  • 集団やコミュニティに属したい
  • 人との交流から安らぎを得たい
  • 自分たちで決めて作りたい
  • 他人の役に立ちたい
  • 自分の存在や能力・経験を示したい

昔はやっていたのに今はやらなくなったものの中には、奥にある人の本能が変わったのではなく、実現する仕組みが時代に合わなくなったという場合があります。LINE やアプリなどの新しい技術やサービスを組み合わせれば、変わらない人の本能を叶えることができます。

マーケティングへの学びは満たす人の本能を見極めることから始める重要性です。本人も気づいていない本能的な欲望までお客さんのことを深く理解し、本能を叶える価値を相手に提案し、実現をするのがマーケターの役割です。

アイデアのつくり方


学びを一般化すると新しいアイデアを生むためのヒントがあります。

新しいアイデアは既存のものの組み合わせからです。組み合わせるためは、一見すると異なるもの同士の奥にある共通の本質をいかに見出せるかです。

例えば商品開発やマーケティングでは、昔ヒットした商品を復刻版として出す時の参考になります。そのアイデアや商品は人のどんな本能を叶えるのかという視点を持ってみると良いです。


まとめ


今回は昭和の近所付き合いが令和になって復活している事例から、マーケティングに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 変わらない人の本能を叶える方法
  • 本人も気づいていない本能的な欲望までお客さんのことを深く理解し、新しいアイデアから本能を叶える価値を提供しよう
  • 新しいアイデアをつくるためには、異なる既存の奥にある共通の本質を見出し組み合わせる
  • 古き良き時代のものにも現在の仕組みを取り入れることで新しいアイデアが生まれる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。