#人生 #設計 #本
自分は特別な才能に恵まれていない──
そう認めながら、世界最高峰の舞台で戦い続けるとはどういうことか。
現役 MLB 投手・菊池雄星選手が 13 万字を自らの手で書き上げた本が『こうやって、僕は戦い続けてきた。「理想の自分」 に近づくための 77 の習慣 (菊池雄星) 』です。
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こちらの本には、理想の自分に近づくための実践的なヒントが詰まっています。
今回は、本書の概要と、読んで考えさせられたことを共有します。
本書の概要
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この本は、現役で MLB の舞台に立つ菊池雄星選手が、「才能に恵まれたエリートではない」 と自認しながらも、トップ環境で戦い続けるために考え方と日々の習慣を言語化した、77 の実践的エッセイです。
本書の特徴は、ゴーストライターを一切介さず著者自身が 13 万字に及ぶ文章を自らの手で書き上げたという点にあります。本人いわく、キーボードに慣れていない状態から全て書き切ったとのことです。菊池選手の脳内にある思索、葛藤、そして確信が、最も純度の高い形で言語化された本です。
本書を一言で表すならば、主題は 「凡庸な自分を設計によって再構築し、世界最高峰の舞台で戦い続けるための知的生存戦略」 です。
花巻東高校からプロ入り、埼玉西武ライオンズのエースを経てメジャーリーグ (MLB) へ。2025 年にメジャーでの二度目のオールスター出場、日本人左腕 MLB 最多勝利記録を更新するまでの道のりで磨かれた思考法と日常習慣が、野球のことを知らない読者にも応用可能な形で体系化されています。
菊池雄星選手は、プロ野球選手として、また一人の人間として、自身の出発点を 「普通にやっていたら勝てない」 という冷徹な自己認識に置いています。多くのスター選手が幼少期から 「神童」 としてエリート街道を歩む中、周囲には常に自分より優れた選手がいたことを強調しています。
自分は特別な才能に恵まれたエリートではないという冷静な現状認識が、菊池選手のキャリアを支える推進力となっています。
学べるテーマ
本書から学べる考え方やあり方は、野球選手に限ったものではありません。
働く人、さらには何かに挑戦する人であれば、参考になる内容が詰まっています。
心と知識── 「才能がない」 からこそ見えた生存戦略
菊池雄星選手が中学生のころに至った結論は、シンプルで鋭いものです。「身体能力やセンスで勝てないなら、心と頭で勝負するしかない」 と。
多くの選手が肉体的なフィジカルの鍛錬にエネルギーを注ぐ中、菊池選手が目をつけたのは、当時のジュニア世代ではほとんど誰も体系的に取り組んでいなかった領域である、「心 (メンタル) と知識」 でした。
心とは、本番で自分の実力を 100% 発揮するためのメンタルのことです。目標をどう設定し、習慣をどう形成し、プレッシャーとどう向き合うか。これらはすべて 「心」 の問題として菊池選手の中に整理されています。
知識とは、自ら情報を集め、知識に転換し、得た知識を実践に変換することです。
なぜこのトレーニングをするのか、睡眠や栄養はどうあるべきかなど、そうした問いを自分の言葉で論理的に説明できるかどうかを、感覚ではなく言語化して理解し、菊池選手はプロになる前から繰り返し求め続けてきました。
本書が繰り返し読者に問いかけるのは、「がんばることはもはや前提に過ぎない。問題は、どうやってがんばるかだ」 という視点です。
やみくもな努力は才能の差を埋めません。自分に合った適切な方向性の努力だけが、才能の差を縮めます。羅針盤として機能するのが 「考えること」 であり、「心と頭脳を鍛える」 という菊池選手の哲学です。この哲学は実践的な答えとして本書全体に貫かれています。
完璧主義から 「最善主義 (最適主義) 」 へ── 今日のベストを探す
最高を目指すという言葉は聞こえがいいものです。しかし、常に最高のパフォーマンスを自分に要求し続けることには、見えにくい罠があります。
調子が悪い日も、環境が整わない日も、体が重い日も確実に来ます。そういう日に 「最高」 を基準に自分を測ると、現実とのギャップが焦りや自己否定を生みかねません。
菊池選手が重視するのは 「最適」 という考え方です。その日の体調、環境、対戦相手を踏まえたうえで、「今の自分が出せる最善の選択は何か」 を追求します。これが本書の言う最善主義 (最適主義) です。
感覚だけではなくデータをもとに今日の練習強度や試合での戦い方を最適化します。完璧なコンディションを目指すより、今日の自分の状態を受け入れたうえで、そこから最善を引き出すという姿勢です。
MLB という世界最高峰の選手たちが集まる舞台で戦うとき、最高を追い求める完璧主義は時に精神を追い詰めます。一方、最適主義はどんな状況にも適応できる柔軟な戦い方を可能にします。自分自身への甘やかしではなく、長期戦を生き抜くための考え方です。
期待値の設定── No expectation, No disappointment
菊池選手が大切にしている英語のフレーズがあります。「No expectation, No disappointment.」 。意味は、「期待しなければ、失望もない」 というものです。
菊池選手の意図は、目標を低く持ったり期待しないことではありません。自分自身への期待値を適切にコントロールすることによって、過剰なプレッシャーをなくし、パフォーマンスを引き出すという知恵です。
過度な自分への期待は、それが達成できなかったときに必要以上の落ち込みをもたらします。「これだけ準備したのだから絶対うまくいくはずだ」 という強すぎる期待は、裏を返せば 「もしうまくいかなかったら自分はダメだ」 という脆弱性を含みます。
菊池選手が説くのは、開き直りに近い姿勢で本番に臨むことで、余計な重圧を解き放ち、自由に動けるようにするということです。
また、「Today is not my day.」 という MLB の超一流選手たちの言葉も紹介されます。
今日は自分の日ではなかったというのは、「今日たまたま自分の力が出せなかっただけ。明日は自分の日にしてみせる」 という、静かで揺るぎない自信を含む表現です。
自分の能力そのものを疑うのではなく、今日という日の条件が自分に味方しなかったと切り離して捉える。この思考の転換が、何度転んでも立ち上がれるレジリエンス (強靭性・しなやかさ) の高い選手をつくります。
期待値の設定は、野球だけでなくビジネスや日常にも応用できます。
プレゼンの前、重要な商談の前などに過剰な期待を抱くのではなく、「全力を尽くした。あとはどう転んでも受け入れる」 という姿勢が、かえって冷静な判断と自然な振る舞いを生みます。
謙虚な姿勢──『平家物語』が教えてくれた諸行無常
菊池選手が人生のバイブルと呼ぶのは、『平家物語』です。
「驕れる者も久しからず」 「盛者必衰の理をあらわす」 。これらの言葉は、いかなる繁栄も永続しないという諸行無常の真理を語ります。
調子がいいとき、人は 「この状態がずっと続く」 という錯覚に陥りやすいものです。
しかし菊池選手は、好調の時にこそ 「いつかは衰える」 という視点を持つことにより、慢心を防ぎ、今この瞬間への集中と感謝の気持ちを維持します。謙虚さは弱さではなく、長く戦い続けるための強さをつくるのです。
相手が誰であれ、学べるものがあると信じて耳を傾ける菊池選手の姿は、平家物語に学んだ謙虚さの実践そのものです。
悲観的に計画し、楽観的に行動する── 覚悟と解放の二段構え
菊池選手は、準備の段階と、本番の段階では、頭の使い方を変えると言います。「悲観的に計画し、楽観的に行動する」 という習慣です。
準備の段階では、最悪の事態も含めてあらゆるシナリオを想定します。「もし試合の登板中に急に雨が降ったら」 「もし相手が予想外の攻め方をしてきたら」 「もし自分の調子が上がらなかったら」 。悲観的に考え抜くことで、想定外をなくし、どんな状況にも対応できる準備を整えます。
それに対して、本番が始まった瞬間に頭を切り替えます。「もう準備は終わった。あとは開き直って全力でいくだけ」 という楽観的な姿勢へ切り替えるのです。悲観的な準備があるからこそ、この楽観的な姿勢は本物になります。
リスク評価と実行力を意図的に分ける方法は、プレッシャーの大きい場面ほど力を発揮します。悲観的な姿勢での準備という覚悟が、本番での余計な思考を手放すことを可能にします。
「今この瞬間」 を大切にする── 結果への不安から解放するための集中
アスリートが抱くのは結果への不安です。このピンチに打たれたら信頼を失うという未来への不安は、今この瞬間に必要な集中力を奪っていきます。
菊池選手は 「今この瞬間を大切にすること」 を説きます。結果への不安の罠から抜け出すための実践的な意識の持ち方です。まだ訪れていない結果を恐れるのではなく、今の目の前にある一球、一打、一動作に意識を向け切ると、思考の余計なノイズが消えます。
これは『平家物語』から学んだ 「いつかは衰える」 という視点ともつながっています。
今この瞬間に投げられているボールも、いつか投げられなくなります。だからこそ、今投げられることそのものに意味があり、価値があるわけです。そう捉えることによって、目の前の一瞬が軽いものではなくなります。
プレッシャーに押しつぶされそうなとき、「今自分にできることは何か」 というただ一点に絞り込む思考法は、野球に限らず、仕事でもキャリアの岐路でも応用できます。
未来の結果は今の行動の積み重ねにしか宿りません。自分の人生とはこれまでの 「全ての今」 の積み重ねです。であれば、今この瞬間に全力を傾けること以上の重要なことはありません。
まとめ
今回は、書籍『こうやって、僕は戦い続けてきた。「理想の自分」 に近づくための 77 の習慣 (菊池雄星) 』を取り上げ、読んで考えさせられたことを書きました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 才能の不足は、適切な方向性の努力と習慣の設計で補える。「何のために何をどうやってがんばるか」 を考えることが、やみくもな努力では到達しない世界に行ける
- 「最高」 を追い求めるより、その日の状態に合わせた 「最適」 を選ぶ姿勢が、長期的なパフォーマンスの安定につながる
- 自分への期待値を適切にコントロールすることで、過剰なプレッシャーがなくなり、本番で自然な力が発揮できるようになる
- 謙虚さは弱さではなく、学び続けるための姿勢。どんな相手からも学べる姿勢が長期的な成長を実現する
- 準備では悲観的に、実行では楽観的に。この二段構えが、プレッシャーの大きい場面でも安定した行動を生む
- 結果への不安から解放するために、「今この瞬間」 を大切にする。人生は全ての今の積み重ね
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