#マーケティング #顧客理解 #価値創出
子どもとのおでかけでは、行き先を決めた後にも確認したいことがたくさんです。ベビーカーで入れるか、授乳室はあるか、子どもが楽しめるか。行ってみないとわからないことが、いくつもあります。
そんな 「行ってから困りたくない」 という親の不安を、地図で解決しようとしているのが子育てマップアプリ 「iiba (イイバ) 」 です。
iiba の事例から、お客さんの困りごとをどう捉え、選ばれるサービスにつなげているのかを見ていきます。
子育てマップアプリ iiba
出典: PR TIMES
子連れにいい場所が地図でわかる
iiba は、子連れにやさしい遊び場や飲食店、授乳室、トイレなどの場所を地図上で見つけられるアプリです。Google マップの子育て特化版というイメージです。
特徴的なのは、ユーザーによる投稿機能です。キッズトイレがあった、ベビーチェアが便利だった。そんな日常の気づきを 5 秒ほどで地図に反映でき、次に訪れる親たちのために共有できます。
利用料金は無料で、地図を見るだけであれば会員登録もいりません。
代表自身の子育て体験から生まれたサービス
iiba を運営するのは株式会社 iiba で、代表は逢澤 (あいざわ) 奈菜さんです。逢澤さんは 2 人目のお子さんの育休中に、自身の体験をきっかけにサービスを立ち上げました。
子どもが生まれてからは家のなかで過ごす時間が増え、社会とのつながりが薄くなる感覚があったそうです。一方、コンビニに立ち寄るだけでも気持ちが軽くなり、外出することの大切さも身をもって感じていました。
ところが子連れでの外出には、ミルクやおむつの準備、行き先選びなど、思いのほか手間がかかります。そこで自分自身の困りごとを解決するために、ノーコードツールでアプリの試作を始めたのが iiba でした。
2022 年 5 月に株式会社 iiba を設立し、2023 年 10 月に iiba の iOS 版をリリース (Android 版は翌 11 月) 。その後、スポット情報は 10 万件を超え、2025 年 4 月時点で累計調達額が 2.3 億円を突破。2026 年 6 月にはシリーズ A で約 3 億円を調達するまでに成長しました。
マーケティングとは
マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。ここでは、マーケティングを広い意味で捉えています。
お客さんに選ばれるとは、商品を買ってもらう、使ってもらう、来店してもらう、指名してもらうことです。「選ばれる理由」 をつくり続けることで、商品も自分たちのビジネスも生き残っていけます。
マーケティングは、まずお客さんを見るところから始まります。
「誰に」 「どんな価値」 を提供したいのか、そしてそのお客さんは 「なぜ」 他の商品ではなく自社の商品を選んでくれるのか (あるいは選んでくれないのか) 。お客さんの立場に立って、深く具体的に理解することが求められます。
選ぶのはお客さんです。自分たちが選ばれるのを偶然に任せず、選ばれる確率を意図的に高めていくのがマーケティングの役割です。
マーケティング活動の全体像
マーケティング活動は、次の 5 つのステップで捉えると見通しがよくなります。
- 注力するお客さんを決める
- そのお客さんのことを理解する
- 困りごとを解決する商品を開発する
- お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
- お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
お客さんを決める
最初のステップは、注力するお客さんを明確に定めることです。誰をお客さんとするかを決めれば、その後のマーケティング戦略を具体的に考えやすくなります。
iiba がお客さんに定めたのは、子育て世帯の親、なかでも小さな子どもを連れておでかけしたいけれど、不安や不便さを抱えている親です。子連れで困っている人に絞ったため、機能や情報も子育ての場面に合わせて考えやすくなります。
お客さんのことを理解する
誰がお客さんかを決めたら、次は自分たちのお客さんがどのような人々 (または企業) で、何を望み、どのような生活やビジネスをしているのかを深く理解します。そのためには顧客調査が重要です。
調査では、顧客の年齢層、性別、職業、趣味、ライフスタイル、望んでいること、ものの見方・考え方や価値観などの情報を集め、お客さんの行動や心理を把握します。そこから、どのような問題や困りごとを抱えているかを探っていきます。
iiba が興味深いのは、創業者の逢澤さん自身が当事者だったことです。育休中に、子育て世帯が抱える困りごとを身をもって経験していました。
逢澤さんが目を向けたのは、子連れで行ける場所の情報だけではありません。行ってから困りたくない、自分の子どもに合うかどうかわからない、忙しいなかで失敗したくない。親が行き先を決めるときの不安まで見ていました。
自分の困りごとを起点にしていたからこそ、お客さんの困りごとを、実際の場面に沿って具体的に捉えられたと考えられます。
困りごとを解決する商品を開発する
iiba は、子連れ目線でいい場所を地図上で見つけられるアプリです。ベビーカーで入れるか、授乳室があるか、キッズトイレがあるかなど、子育てならではの条件で場所を絞り込めます。
親にとっては、子連れで行ける場所がわかるだけでなく、うちの子に合いそうかを判断できることも大切です。
サービスをつくる段階で iiba が直面したのが、ユーザー投稿型サービス特有の課題でした。投稿が集まらないとユーザーが増えず、ユーザーが少ないと投稿も集まらない。いわゆる卵と鶏の問題です。
逢澤さんは、この問題に 2 つの方法で対応しました。1 つは SNS で発信している子育てインフルエンサーへの協力依頼。もう 1 つは地方自治体との連携です。少子化対策として子育てマップを整備している自治体は多く、その情報を掲載させてもらう形で提携を進めました。
インフルエンサーとの取り組みによって、リリース時点ですでに約 2,000 スポットの情報を揃えた状態で iiba を世に出すことができました。子連れの親が実際に使いやすい情報を揃えてからサービスを始められた点に意味があります。
お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
商品が用意できたら、見込み顧客に知ってもらい、興味を持ってもらい、購入を後押しします。代表的な活動には、広告や販売促進などのマーケティングコミュニケーションや店頭施策があります。
大切なのは、お客さんの立場になって、相手の日常や状況に合う言葉で商品の魅力を伝えることです。商品の特徴やメリットをわかりやすく伝え、相手が自分に関係のある商品だと思えれば、購入や利用にもつながりやすくなります。
iiba の正式リリース時には、総フォロワー数が 50 万人を超えるママインフルエンサーたちがアンバサダーとして参加しました。子育て中の親と近い立場のインフルエンサーが、自身の体験として子連れにいい場所を紹介するため、受け手も自分の生活に置き換えて考えやすくなります。
また、Instagram でおでかけ情報を探す親たちの行動に合わせ、SNS で見つけた場所を iiba の地図上で探し、そのまま訪れられるようにしています。SNS で場所を知ってから実際に出かけるまでをつなげています。
お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
自社商品を購入してもらった後は、実際に使ってもらう段階に入ります。
お客さんが使って困りごとを解決でき、商品に価値を感じられることが重要です。売り手も、商品を売ったりアプリをインストールしてもらったりした後の利用まで見て、満足してもらえる体験をつくっていく必要があります。
iiba は、お客さんが使うほどサービス内の情報が増えていく仕組みになっています。ユーザーが新しい場所を投稿すれば地図上の情報量が増え、次に使う親が見つけられる場所も増えていきます。
ひとりの親の体験が次の親の意思決定を助け、その親の体験がまた次の親の助けになります。iiba では、利用者の投稿が次の利用者に役立つ流れが生まれています。
投稿しやすくする工夫もあります。発見した場所を 5 秒ほどで地図に反映できる手軽さに加え、投稿するとポイントが貯まり、ギフトやクーポンと交換できる仕組みも用意されています。
iiba のスポット情報は 10 万件を超え、子育て世帯のおでかけを支える情報基盤へと広がっています。
まとめ
学びのポイントをまとめておきます。
- マーケティングとは、お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般。まずお客さんを見るところから始める
- お客さんを絞り込むことで、機能や伝え方を具体的に考えやすくなる。誰に選ばれたいかが、その後の意思決定の基準になる
- お客さんの困りごとは表面に見えるものとは限らない。その奥にある不安や葛藤まで踏み込むことで、解くべき問題が見えてくる
