#家族 #努力 #本
家族の幸せに、正解はあるのでしょうか。
早見和真 (かずまさ) さんの小説『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい』は、そんな普遍的なテーマを問いかける作品です。
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今回は、この本の紹介と、読んで考えさせられたことを書いています。
本書の概要
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本書は 「家族の幸せとは何か」 を、12 歳の少女が中学受験を通して自分の答えを見つけようとする物語です。
同時に、中学受験を通して描かれる父と娘の成長と、家族の絆の再構築の物語でもあります。
あらすじ
主人公は小学 6 年生の長谷川十和 (とわ) という名前の女の子です。周りから見れば 「楽しい母・やさしい父・かわいい妹」 の恵まれた家庭なのに、十和の心は荒れ、家族に苛立っていました。
母は半ば強引に中学受験へ進ませますが、十和が本音を吐き出せるのは LINE で繋がる大人の男性の 「あの人」 だけ。そんな状態で物語が動き出します。
十和は 「ここから逃げたい」 という衝動から、大阪で一人暮らしする祖母を頼り、大阪の私立中学へ進学して離れて暮らすことを決意します。父は 4 人が離れて暮らすことに反対しますが、ある条件を出して十和の希望を受け入れるのでした。
本書の構成 - 少女の繊細な内面と、熱き受験奮闘記
本書は、思春期特有の揺れ動く感情を描く前半と、親子で高い壁に挑む後半の二部構成で展開されます。
前半では、小学 6 年生の長女・十和の大人でも子供でもない時期特有の、言葉にできない 「居心地の悪さ」 が描かれます。家族を趣味とする父の深い愛情さえも、彼女にとっては 「息苦しさ」 や 「煩わしさ」 として響いてしまいます。
触れれば壊れてしまいそうな、少女の繊細な心の機微が丁寧に描写されます。
一転して後半は、家族総力戦の超が付くほどの難関中学の受験の奮闘記になります。
夏休みは毎日 10 時間勉強し、休みの 40 日間で合計 400 時間勉強するという、大学受験にも匹敵する勉強漬けの日常。夏休み以降の 2 学期に入り、冬休み、受験直前期までの間の母親と妹の支え、塾の先生たちの協力。そして何より父親の献身的なサポートを得て、十和がむしゃらに努力する姿が描かれます。
その中で、家族の関係性が少しずつ変化していく様子が綴られていきます。
考えさせられたテーマ
本書を読み進めるうちに、中学受験という物語を通して、私たち自身の家族や人生について深く考えさせられました。
家族とは何か、幸せな家族の形とは
本書が問いかける最大のテーマは、タイトルにも入っている 「家族の幸せの形」 です。
表面的に見える 「理想の家族像」 と、その内側にいる 「一人ひとりが感じている実感」 との間にある距離が浮かび上がります。外から見て幸せそうに見える家族が、必ずしも内側から見て幸せとは限りません。逆に、葛藤や衝突があったとしても、そこに信頼と尊重があれば、確かな家族の形になり得ます。
読みながら思わされるのは、幸せな家族にひとつの決まった正解は存在しないということです。
もしあるとするならば、家族のメンバーがお互いを信頼し、お互いを尊重し、そこに自分があること、自分がいていいと思えること、いつでも自分の帰れる場所があること。それが家族なのではないでしょうか。
物語の中で十和の母親が語る言葉が印象的です。「毎日毎日家族が更新されていくようだった。昨日までの家族より今日の家族の方がずっといい。毎日のようにそう思ってた」 —— この言葉は、家族の形とは固定されたものではなく、日々変化し成長していくものだということを教えてくれます。
思春期の少女が抱く葛藤と、親子のすれ違い
思春期特有の、特に女の子が抱える心の複雑さが、小学 6 年生の十和という主人公を通じて繊細に描かれます。
大人でもなく子どもでもない、その中間地点にいる時期特有の難しさ。周囲の大人たちは善意から声をかけ、サポートしようとするけれど、その優しさがかえって息苦しく感じられる。「自分はこの家族に必要ない」 と自虐的に感じたり、自分以外の家族のメンバーの楽しそうな声に胸を掻きむしられたり。なぜ父親と二人きりになると息苦しいのか、自分でも説明できない感情にうまく対処できません。
大人と子どものちょうど真ん中にいる時期の矛盾やモヤモヤは、多くの人が経験したことのある普遍的な感情でしょう。思春期のこの時期ならではの感情の揺れが、この小説では押しつけがましくなく、しかし確かな手触りをもって描かれています。
中学受験というストーリーも、複雑さを際立たせます。「人と自分を比べるな」 と言われながら偏差値で評価される矛盾、親は自分の子どもと他の子の成績を比べて勝手に一喜一憂する現実。そうした葛藤の中、十和はそれでも受験勉強に邁進します。
中学受験での親子協力
小説の後半で中心的なテーマとなるのが、難関中学受験を通した親子の協力と絆です。
特に印象的なのは、父親の十和への関わり方でした。それまで距離を感じていた父娘がタッグを組み、受験という共通の目標に向かって並走します。父親の献身的な姿に読んでいて心を打たれました。
一方で母親は、あえて口を出さないという形で十和を影からサポートします。勉強や志望校のことには口出ししない、自分が提案した中学受験だというのに、それが最も上手く回ると信じているからです。
母親が真冬でも厚着をするのは、絶対に自分が体調を崩すまいという強い意志の表れ。降って湧いたような父と娘の受験勉強の濃密な時間は、間違いなく母が提供したものでした。
妹も含めた家族全員が、それぞれの役割を果たしていきます。難関私立中学の受験という大きな壁を乗り越える過程で、家族関係が少しずつ更新されていきます。
母親の 「敵同士 (父と娘) に手を組ませるには、共通するさらなる大きな敵 (難易度の高い志望校の合格) を作る」 という言葉が象徴するように、中学受験という壁が家族を一つにしていくのです。
高い目標に向けて一心不乱に努力する価値
本書は、結果 (志望校の合否) 以上に 「努力する過程」 に価値を置いています。
まだ自分という人間が定まっていない思春期の時期に、高い目標に向かって一心不乱に努力する経験の価値です。
「がんばるべき時期にがんばれることは楽なこと」 「目標を定めてそのために努力するのは楽しいこと」 という言葉が物語の中で語られます。楽しいの 「楽」 と、楽をすることの 「楽」 に同じ漢字があてがわれていることの意味——。それは、努力することと楽しむことが本来は一体のものだということなのかもしれません。
父親が語る言葉も印象的です。「大人って損得でしか行動できないし、自分が納得できることでしか努力できない。小学生が不満を抱えながらも、それを打破して努力しようとすることって尊い」 。損得抜きで、納得できないことにも向き合って努力する経験が、人を強くするという考え方が示されます。
受験勉強に限らず、日々の生活や人生そのものに当てはまります。たとえ中学受験が人生の長い道のりにおける 「本の 1 ページ」 に過ぎないとしても、その 1 ページにすべてを懸けて努力した経験は、その後の人生を切り拓く力になります。
まとめ
小説『問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい (早見和真) 』を読んで、考えさせられたことを書きました。
学びのポイントをまとめておきます。
- 家族の幸せに決まった正解はない。大切なのは、お互いを信頼し尊重し、そこに自分がいていいと思える場所があること
- 家族の形は固定されたものではなく、日々変化し成長していく。「昨日までの家族より今日の家族のほうがいい」 と思える変化が幸せを感じさせる
- 思春期の複雑な感情は、大人でも子どもでもない中間地点にいるからこそ生まれる。その時期の葛藤を経て子も親も成長する
- 高い目標に向かって一心不乱に努力する経験は、結果以上に価値がある。努力することと楽しむことは本来一体のもの
- 損得抜きで、納得できないことにも向き合って努力する経験が、人を強くする。今やるべきことに全力で取り組むことが、未来を切り拓く力になる
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